「ハネムーン期間」なきトランプ政権 就任100日で見えてきた変化と課題
NATOへの姿勢は軟化?モンテネグロ加盟へ
シリア以外の地域でも、アメリカはロシアを刺激するような行動を取り始めている。米露外相会談の翌日となる先月13日、1100人のNATO軍部隊がポーランド北東部のオジシュに駐留を開始した。駐留部隊の規模は6月までに増強される予定で、部隊の大部分は米軍で構成されている。この計画は以前から計画されていたものの、トランプ政権発足後に実際に実行に移されるのかに注目が集まっていた。 オジシュはバルト海に面するロシアのカリーニングラードまでわずか60キロの位置にあり(周辺を他国に囲まれた飛び地となっている)、バルチック艦隊の拠点でもあるこの町にはロシアの防空ミサイルシステムが配備されている。先月25日には、バルト3国の1つであるエストニアの空軍基地に米空軍の最新鋭戦闘機F-35が2機配備されている。 就任直後にトランプ大統領はNATOの存在意義を疑う発言を繰り返し、加盟国により多くの分担金を支払うよう要求し、物議を醸した。しかし、トランプ大統領のNATOに対する見解は時間と共に変化し、3月後半にはティラーソン国務長官が米議会上院に対してモンテネグロのNATO加盟に向けた動きを承認するよう働きかけ、アメリカはモンテネグロのNATO加盟にゴーサインを出した。バルカン半島におけるNATOの影響力拡大にロシアが大きな懸念を示すなか、モンテネグロの議会は先月28日にNATO加盟を可決。今月25日にベルギーのブリュッセルで開かれるNATO首脳会議で、モンテネグロの加盟が承認される見通しとなった。 トランプ大統領は先月12日、ホワイトハウスでNATOのストルテンベルグ事務総長と会談を行い、その後の記者会見で「NATOはもはや時代遅れのものではない」と語り、NATOの重要性を強調した。トランプ大統領の行動は予測が難しいとされるが、この1か月の動きを見る限り、政権内部で対ロシア外交の骨子は確立されたように思われる。しかし、トランプ大統領の周辺とロシア政府との過去の関係が、政権にとって命取りになりかねない現状は何とも皮肉な話だ。
--------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト