「ハネムーン期間」なきトランプ政権 就任100日で見えてきた変化と課題
「壁」「オバマケア」「入国制限」「NAFTA」……
トランプ大統領が選挙期間中に打ち出した公約はなかなか達成できていないのが現状だ。メキシコ国境沿いに建設すると公言してきた「壁」の建設費が、実際には選挙期間中に出した試算よりもはるかに高いことが判明し、現在は予算計上を一旦断念している。オバマケア(医療保険制度改革)の廃止に向けて積極的に動いたものの、共和党内からも支持を得ることができず、オバマケア代替法案は直前になって取り下げられた。テロ対策として、イスラム圏7か国出身者の入国を制限する大統領令を出した際には国内外で批判が噴出したが、最終的に最高裁判所が差し止めを命じている。 予算面の問題や、「身内」である共和党内部からの反対、最高裁判所からの差し止め命令など形はさまざまであるが、トランプ大統領が選挙期間中から大きく掲げてきた公約の中には実現に程遠いものが少なくない。 また「公正ではない」という理由でかねてから離脱する意思を明確にしていたNAFTA(北米自由貿易協定)では、連邦議会や財界からの否定的な声が相次ぎ、先月26日にカナダとメキシコの首脳と電話会談を行った際に、現時点でのNAFTA離脱は考えていないと両首脳に伝えている。電話会談が行われる前に複数の米メディアが「NAFTA離脱を行うための大統領令が準備されている」と報じており、離脱が実際に行われる可能性も存在するが、トランプ大統領は協定をめぐって再交渉する用意があるとだけ語っている。
ロシアとの関係修復ムードは一転
大統領選挙期間中からロシア政府との不適切な関係を指摘されてきたトランプ大統領。大統領選でトランプ陣営の外交政策アドバイザーを務めたカーター・ペイジ氏や、マイケル・フリン前国家安全保障問題担当大統領補佐官らが、選挙期間中からロシア政府から不適切な形で金銭を受け取っていた疑惑が消えておらず、彼らは現在も捜査の対象となっている。 大統領就任当初はロシアとの関係修復が確実視されていたが、最近のトランプ政権、そしてロシアのプーチン政権の動きから判断して、米露関係は「修復」とは反対の方向に進んでいるようにもみえる。 先月12日にモスクワで行われた米露外相会談。アメリカのティラーソン国務長官はロシアのラブロフ外相と5時間にも及ぶ会談を行い、その後のプーチン大統領との会談も2時間に及んだが、両国の関係悪化がより浮き彫りになる後味の悪い結末となった。ティラーソン国務長官のロシア訪問は、トランプ政権の閣僚としては初であった。 先月6日にはシリア軍に対する巡航ミサイル攻撃が行われ、会談直前の11日にはティラーソン長官がG7外相会合の行われたイタリアで、ロシアに対してシリアのアサド政権支持をやめるよう要求したが、同じ日にロシアのプーチン大統領は「アサド政権の化学兵器使用は明確な証拠のないまま、ロシアと対立する欧米側にうまく利用されている」と発言。シリアをめぐって米露が歩調を合わせられない現実が改めて浮き彫りとなった。