シャープ「AQUOS R9 pro」ライカ監修“カメラ極振り”スマホ
シャープが10月29日、同社のスマートフォン最上位モデル「AQUOS R9 pro(アクオス・アールナイン・プロ)」を発表した。12月上旬以降の発売を予定し、大手通信事業者ではドコモが取り扱うほか、SIMフリー版も販売する。価格はSIMフリー版が19万円台前半になる見込みだ。 この端末は発表直後、X(ツイッター)でトレンド入りするなど大きな話題を集めた。理由はカメラの強烈な個性にある。ケータイジャーナリストの石野純也さんが解説。【毎日新聞経済プレミア】 ◇ほとんどデジカメ AQUOS R9 proはスマホとして開発されたが、見た目はデジタルカメラそっくりだ。背面の三眼カメラ(標準、広角、望遠)をリングで大きく囲むデザインになっており、別売りのアダプターを付ければ、市販の一眼カメラ用レンズフィルターも装着可能。こうなるとますますデジカメに見える。 さらに端末の側面には、デジカメのパーツをそのまま使ったシャッターボタンも搭載する。ボタン半押しでピントを合わせ、そのまま押し込むと撮影、といったデジカメらしい操作性にもこだわった。 カメラまわりのことは、ドイツの老舗カメラメーカー、ライカが監修し、画質の調整やレンズ選定などで協力した。画質を左右する撮像素子(センサー)は標準カメラが1インチ超(1/0.98)と大判で、高級なコンパクトデジカメに近い。ここにAIによる正確な色表現などが加わり、あたかも本家ライカのカメラで撮ったような雰囲気ある写真が仕上がる。 望遠カメラも1/1.56インチの大型なセンサーを搭載し、遠くのものでもきれいに撮れる。レンズは人の自然な視野角に近く、人物撮影に適しているとされる仕様(画角36度、焦点距離65mm相当)を採用した。一般的にスマホの望遠カメラは、メインの広角カメラに比べるとセンサーのサイズが小さく、画質もイマイチだが、シャープはこの部分を強化し、ポートレートでの画質も追求した。 ◇高級モデルを出す理由 シャープは2021年のモデルからライカとの協業をスタートし、「1インチセンサー」もこの時に採用した。だが、端末の形状は一般的なスマホを踏襲し、これまでは“望遠カメラ”も搭載していなかった。カメラにこだわった他社の最上位モデルと比べると、物足りない部分があった。 そこで登場したのがAQUOS R9 proだ。今まで以上にカメラ機能に振り切り、一番いいものを求める熱烈なファン層にターゲットを絞った。 スマホは現在、円安や部材費の高騰を受け、高機能モデルの価格が上がっている。19年に電気通信事業法が改正され、通信事業者が取り扱うスマホ端末への割引規制が強化されてきたことも相まって、高機能モデルの売れ行きにブレーキがかかっていた。 それでもシャープにとって「高機能モデルは技術の最先端を攻めていくうえで非常に重要」(小林繁・通信事業本部長)という。高機能モデルで技術のノウハウが得られないと「スタンダードモデルでもいい画質を作れない」(同)というのがその理由だ。AQUOSのイメージを高めるうえでも、高機能モデルがあることの効果は大きい。 ◇海外勢に一矢報いるか スマホカメラの画質競争は各社の高機能モデルの間で激化しており、ともに“デジカメ超え”を目指している。スマホ用の大型センサーが登場したことに加え、AI機能で画質を向上させられるようになったことで、カメラに重点を置く機種も増えた。 特に中国メーカーが、このトレンドをリードしている状況だ。5月にはライカと協業したシャオミ(Xiaomi)が、日本で「Xiaomi 14 Ultra」を発売した。 この機種も外観がデジカメに近い。外付けの「Photography Kit(フォトグラフィー・キット)」を装着すれば、よりカメラのように扱える。販売台数は少ないながらも、初回出荷では完売店が続出した。 今回、Xで話題になったように、AQUOS R9 proへの注目度も高い。海外勢が勢いを伸ばすなか、シャープが国内市場で一矢報いることができるのか、注目したい。