学会が「安全性を保証できない」と警告する美容再生医療、全国100施設で実施可能だけど大丈夫なの? bFGF皮下注入、実施認めた「事前審査」に専門家から疑問の声
筆者はカメイクリニック2認定再生医療等委員会の委員に対し「まず研究として実施して、データを集めてから治療として認めてもらうという進め方は考えなかったのか」という質問もした。回答は「正当なことを言えばそうだが、それをやったら10年かかる。そういうことは企業しかできない」だった。 ▽合併症が起きたら「確実な治療法はない」 実施を認めている委員会の判断は妥当なのか。再生医療の審査について実態調査をした京都大学iPS細胞研究所の藤田みさお教授(生命倫理学)は「美容医療としては他にも選択肢があるはずなのに、なぜあえてリスクがあって科学的な根拠が不十分な手法を選ぶのか。踏み込んだ議論はあったのだろうか」と疑問を呈する。 「診療指針で『安全性を保証できない』と指摘していて、bFGFを販売する製薬企業も皮下注入を推奨していない。それを知っていて実施しているなら問題だ」と指摘。「健康な人を対象にしているからこそ、医療を受けたことによる危害が生じないよう、実施して良いのかどうか、委員会は慎重に判断する必要がある」と訴える。
七つの委員会のうち、10施設の提供計画を審査している医療法人社団美翔会認定再生医療等委員会(東京)の事務局に、学会の診療指針で「安全性を保証できない」などと評価されている点に審査で議論したのかどうかをメールで問い合わせると、「当事項は、委員会の審査項目ではないため、審議はしていない」と回答。理由を聞くと「bFGFは細胞でないため審議の対象にならない」からだという。 しかし、厚労省研究開発政策課の担当者は「細胞と、そうでない医薬品などを混ぜて使う計画であるなら、混ぜて問題はないのか、科学的に妥当なのかを総合的にチェックする必要がある」と話している。 約100施設が計画を届け出ているが、どのくらいの人がこの手法を受けているのかは分からない。合併症の対応法には、ステロイド注射のほかに、しこりを手術で取り除く処置もあるが、手術後にかえって顔の膨らみが増すケースが報告されているという。 合併症の相談を受けた経験がある神戸大病院美容外科の原岡剛一診療科長はこう警鐘を鳴らす。「現状、合併症への確実な治療法はない。不幸な事態が生じていて、確実に救える方法がない以上、学会の診療指針で示している通り、この手法を安易に勧めるわけにはいかない」。