学会が「安全性を保証できない」と警告する美容再生医療、全国100施設で実施可能だけど大丈夫なの? bFGF皮下注入、実施認めた「事前審査」に専門家から疑問の声
医療機関は「こういう細胞を使ってこうした研究や治療を考えている」といった内容を提供計画としてまとめ、学術論文など根拠となる資料も付けて国が認定した「認定再生医療等委員会」に提出し、審査を受ける必要がある。 委員会は全国に約160カ所あり、どこに審査してもらうかは医療機関が決められる。審査を受けた後、医療機関は提供計画や患者への説明文書を国に届け出る。届け出をせずに再生医療を提供すると懲役刑や罰金が科される。効果や安全性が明確でない再生医療を野放しにしないために作られた仕組みだ。 厚労省は、届け出のあった再生医療の名称や患者向けの説明文書を「e―再生医療」というホームページで公開している。 筆者は、公開されている患者向けの説明文書を調べ、この手法のキーワードである「PRP」や「bFGF」という単語が出てくる提供計画を探した。さらに、医療機関のウェブサイトを確認し、審査した委員会にも取材した結果、PRPにbFGFを混ぜて注入する手法の実施を約100施設が届け出ているのを確認した。
審査を担当した委員会は七つ。最も多い50施設以上の提供計画を審査した「カメイクリニック2認定再生医療等委員会」(富山県高岡市)の委員は「これまで7千以上の実施例について各施設から報告を受けているが、異常は起きていない。安全性は担保できている」と説明する。学会の診療指針で「安全性を保証できない」とされている点については「いろいろなクリニックがやっていて、独自の方法だと言うところもある。他の注入剤の後に入れるとか、量を多く入れることで問題が起きるのだろう。私たちは手法の基準を統一して研究会を作って、できるだけそういう問題がないように啓蒙しようと取り組んでいる」と主張。「ヒアルロン酸では壊死や失明といった合併症が報告されている。PRPとbFGFではそんな症例は1例もない。ヒアルロン酸を推奨して、PRPとbFGFを否定するのはおかしい」と反論した。 だが、診療指針では「国外での適切な臨床研究がなされていない」や「エビデンスレベルの高い論文がない」と書かれている。指針の作成に関わった関西医科大の楠本健司名誉教授は「根拠となる論文、データが少ない。はっきりした評価が定まっていないが、bFGFを加えたPRPの注入により実際に合併症が生じていることもあり、指針では注意喚起する内容になった」と話す。