学会が「安全性を保証できない」と警告する美容再生医療、全国100施設で実施可能だけど大丈夫なの? bFGF皮下注入、実施認めた「事前審査」に専門家から疑問の声
異変が起き始めたのは投与から1~2カ月後。顔が腫れて、笑顔が作りづらくなった。頬が重く、膨らみが増していく。1年ほどで「顔がパンパンになって、形がおかしくなっていた」という。 注入したクリニックに相談したが、医師は「何が不満なの?前より若返っているよ」と取り合わない。他の複数の医療機関で診てもらうと「これはbFGFによる膨らみだ」と言われ、それを伝えても注入した医師は「自分はbFGFを1万人以上に打っていて、誰よりも分かっている。これはbFGFの膨らみではない」と否定する。 女性は、細胞の増殖を抑えるためステロイドを注射する治療を何回か受けた。頬の腫れは少し引くが、時間がたつとまた膨らんでくる。頬や口元には硬いしこりが残っている。友人やSNSで知り合った人にも合併症に悩む人がおり、治療法などについて情報交換している。 「朝から晩まで顔の凸凹が気になって落ち込んでいる。体内にある成分と一緒だから自然で良いと医師から言われたのに、こんなことになるなんてひどい」。そう女性は訴える。
▽学会調査で合併症40件超 日本美容外科学会が2017年11月~18年1月に会員の医師を対象に実施した調査では、この手法による合併症を診療したとの報告が42件あった。投与した部位の過剰な膨らみや硬いしこりが主だった。 結果の分析では「多くの合併症が存在していることが確認された」と指摘している。ただ、回答した医師が限られているため、正確な実態は分からない。 調査した順天堂大順天堂医院の水野博司教授(形成外科)は「『合併症が起きたことはない』と言う医師のクリニックで注入して合併症が起きた人が他の医療機関に行く事例がしばしばあると聞く」と指摘。「妥当性のある治療法とはまだ言い切れない」と話す。 ▽実施を認めた委員会の言い分を聞いてみると… この手法はどのくらい広がっているのか。調べる上で、再生医療を規制する仕組みが手がかりになった。 再生医療は、2014年に施行された「再生医療安全性確保法」で規制されている。要となっているのが事前の審査だ。