指揮官“怒りのインタビュー”が呼んだ共感。「不条理な5連戦」でWEリーグ・新潟が示した執念と理念
逆境の中でタイトル争いを支える新潟のサッカーとは?
そのような逆境の中でも、新潟は今季、タイトル争いができる位置につけている。14節を終えて9勝2分3敗。“3強”と言われるINAC神戸、浦和、東京NBに食らいつき、浦和に次ぐ3位の座をキープしてきた。 現役の代表選手はGK平尾一人しかいない。だが、過去にワールドカップを経験した川澄や上尾野辺、五輪予選に出場した川村優理ら経験のある選手が多く、世代別代表候補に入った選手たちが、ハードワークを徹底。得点数は「14」で他の強豪に比べると少ないが、無失点試合が「8」と守備が堅く、1点差の勝利は7試合と、ゲームコントロールが光る。 WEリーグでは2021年が8位、昨年は10位と下位に低迷。だが、今季は開幕前のリーグカップで準優勝という結果を残し、リーグ戦でも好調を維持している。その要因を探ると、2つの大きな変化が見えてくる。 一つは、今季就任した橋川監督の下で、目指すサッカーが明確になったことだ。 「トップチームですから、目標は1点差でもいいからとにかく勝つこと。それがプレーモデルの一番にあります。2点、3点取れるチームになれたらいいけれど、今はこの勝ち方ができるのが強みです」(橋川監督) ロースコアで1点差の試合はスペクタクルに欠けることも多いが、新潟のサッカーは見ていてまったくストレスを感じない。 指揮官は昨年7月の就任後、「堅守柔攻」というコンセプトとともに明確なプレーモデルを示し、選手が自主的に判断してプレーできるスタイルを構築。試合中の選手同士のコミュニケーション量は明らかに増え、相手の戦い方に応じてハイプレス、リトリート、ボール保持、カウンターと、狙いが明確になった。司令塔の上尾野辺は、「守備は(コースの)切り方がわかりやすくてスムーズにできているし、ボールを受けてからみんながはっきりアクションしてくれるので、パスを出しやすいです」と、変化を口にした。 個も躍動している。最前線の石淵萌実が縦への推進力をもたらし、海外挑戦を終えて国内復帰した川澄は正確なクロスで起点に。ケガから2年ぶりにピッチに戻ってきた川村は、勝負どころを見逃さない玄人好みのプレーを見せている。また、サイドアタッカーだった園田瑞貴は初挑戦の左サイドバックで相手の脅威となり、滝川結女はストライカーとして進化を続けている。