指揮官“怒りのインタビュー”が呼んだ共感。「不条理な5連戦」でWEリーグ・新潟が示した執念と理念
変化した雰囲気「厳しいことを言う選手がマイノリティにならない」
2つ目は、練習の質の変化だ。上尾野辺は、「誰が出ても自分たちがやりたいサッカーを意思統一してできています」と語気を強めた。小さなミスをそのままにせず、成功したプレーも、質を上げるために妥協しない。上尾野辺は言う。 「練習の雰囲気が変わりました。以前、結果がついてこない時期は練習で覇気がなくて、『どうしたら勝てるんだろう?』と不安が重なって、結果が出なくてずるずるいってしまう状況だったのですが、今季はカップ戦で決勝までいけて、『自分たちも戦えるぞ』とわかりましたし、レギュラー争いもバチバチです」 加入1年目ながら、橋川監督からキャプテンマークを託された川澄は、チームの雰囲気を変えた一人だろう。ほんの小さな緩みを見逃さず、勝者のメンタリティーも知っている。 「お金を払って見てくれている人たちを相手にしている職業なので、その厳しさは練習から伝えています。ただ、それができるのは、本当に(新潟の)厳しい時代を知っている上尾野辺や川村、代表の平尾がいてくれるからこそだと思いますし、(中堅の)杉田(亜未)や道上(彩花)も経験を生かしてくれているので、バランスはすごく取れているなと。厳しいことを言う選手がマイノリティにならないし、(自分が)言っていることに対しても、みんながついてきてくれる感じがあります」(川澄) そのベテラン選手たちとも信頼関係を築いてチームの自主性を引き出し、時には選手以上に熱さを全面に出してチームの手綱を締める指揮官のマネジメントも、チームの原動力だ。守護神の平尾は言う。 「監督は自分たちのことを信頼して、何もかも直球で投げてくれます。試合に来られなかったメンバーも、ベンチのメンバーもスタメン組も、同じぐらい選手を愛してくれているのが伝わりますし、監督のために勝利を届けたいと思わせてくれる人です」 WEリーグは残り9節。4月は代表戦を挟んで14日に第14節が行われる。束の間の休みを経て、タイトルレースは佳境を迎える。 厳しい冬と連戦の逆境を乗り越えた新潟は、強豪の背中に食らいつきながら、クラブ初タイトルに向けてここからさらにチームを仕上げていく。 <了>
文=松原渓[REAL SPORTS編集部]