日銀会合注目点:政局混迷と円安で強まる不透明感、政策維持の見通し
(ブルームバーグ): 衆院選での与党大敗や足元の円安進行を受け、日本銀行が進める金融政策の正常化路線に不透明感が増している。現状維持が見込まれる今週の金融政策決定会合では、植田和男総裁の記者会見や新たな「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、今後の政策運営についてどのような見解が示されるかが焦点だ。
27日投開票の衆院選で自民党と公明党の与党の議席数が過半数を割り込み、政局混迷は避けられない状況にある。政権の枠組みが流動的なことに加え、法案成立などで連携が想定される野党は景気刺激的な金融・財政政策を主張している政党が多く、利上げによる金融政策の正常化には慎重とみられている。
もともと日銀は、米中を中心とした海外経済の先行き不透明感は引き続き強く、金融市場もなお不安定な状況にあるとの認識だ。11月5日に接戦が予想される米大統領選を控えていることもあり、今月30、31日の会合では静観を続ける公算が大きい。
ブルームバーグが17-22日にエコノミスト53人を対象に実施した調査では、追加利上げの時期について53%が12月会合を予想。来年1月の32%と合わせて85%に達したが、衆院選の結果を受けて後ずれを見込むエコノミストも少なくない。
一方、円安進行が日銀の背中を押すとの見方もある。ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎エコノミストは、賃金と消費者物価の上昇が続き、新たな円安圧力が生じている中で、「インフレ率が2%の物価目標をオーバーシュートするリスクの増大が日銀によるさらなる緩和縮小を促す」と指摘。来年1月の追加利上げの見方に変化はないという。
複数の関係者によると、日銀内では物価情勢は2%目標実現に向けて着実に前進しており、足元まではオントラック(順調)との認識がほぼ共有されている。日銀は経済・物価が見通しに沿って推移すれば政策金利を引き上げていく方針だ。選挙結果を受けて利上げに対して過度に慎重な見方が広がることは、さらなる円安進行によって輸入物価上昇への懸念を強める可能性もあり、日銀の本意ではないとみられる。