日銀会合注目点:政局混迷と円安で強まる不透明感、政策維持の見通し
衆院選で与党が過半数割れしたことで政局不安が高まった28日、円相場は一時1ドル=153円88銭と3カ月ぶりの水準まで円安が進んだ。
日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS) 市場では、円安進行を受けて追加利上げが前倒しされるとの見方から、来年6月までに25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが完全に織り込まれている。 円高基調が続いていた9月会合直後は、今後10カ月間は政策変更はないと示唆されていた。
コミュニケーション
政治の混乱と円安進行を踏まえて、日銀が先行きの金融政策運営についてどのようなメッセージを発信するのか、これまで以上に市場の関心は高い。内外政治の不透明感の強まりなどを踏まえてハト派的な発信を強めれば、一段と円安が進行する可能性がある。総裁会見と展望リポートを通じた対話力が試される。
総裁会見では、政策判断に「時間的な余裕はある」という従来の発言の変化が焦点となる。みずほ銀行金融市場部グローバル為替トレーディングチームの南英明ディレクターは、時間的余裕があることを強調すれば「12月の利上げ観測の後退やこの為替水準を実質的に容認するとの見方で円売りになるだろう」と指摘。その場合、「155円や157円、翌日の米雇用統計次第では160円乗せも想定し得る」としている。
展望リポートでは、前回の7月に「上振れリスクの方が大きい」とした2024年度と25年度の消費者物価見通しに関するリスクバランスの修正の有無が注目される。8月の市場急変に伴う大幅な円安修正を背景に、植田総裁は9月会合後の会見で「物価上振れリスクは相応に減少している」との見解を示した。足元で再び円安が進む中、リスクの方向性は円相場と利上げ観測に影響を及ぼしそうだ。
他のポイント
--取材協力:Masaki Kondo、酒井大輔.
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Sumio Ito