不登校とうつ病の関連性【専門クリニックから見た最前線】
◇不登校の現状と問題点
不登校は、現代の日本の教育現場が直面する最も深刻な問題の一つです。文部科学省の「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度の小中学校における不登校児童生徒数は24万4940人に達し、過去最多を更新しました[1]。この数字は前年度と比較して約25%の増加を示しており、その急激な増加傾向に警鐘を鳴らさざるを得ません。 不登校児童生徒の割合は全児童生徒の2.6%を占めていますが、学校段階別に見ると、その深刻さがより明確になります。小学校では1.3%、中学校では5.0%と、中学校での割合が著しく高くなっています[1]。つまり、中学生の約20人に1人が不登校状態にあるという現実があります。 この数字が示すように、不登校は今や看過できない教育問題となっています。不登校の長期化は、学習の遅れや社会性の発達の阻害、進路選択の制限など、子どもたちの将来に大きな影響を与える可能性があります。特に義務教育期間中の不登校は、基礎学力の習得や健全な人格形成に支障を来す恐れがあり、その影響は成人後の社会生活にまで及ぶ可能性があります。 さらに注目すべきは、不登校の背景にある要因の複雑さです。同調査によれば、不登校のきっかけとして最も多いのは「無気力、不安」であり、小中学校ともに約50%を占めています[1]。この「無気力、不安」の中には、うつ病などの精神疾患が潜んでいる可能性があることを私たちは認識する必要があります。 興味深いことに、一般に不登校の主要因と思われがちな「いじめ」は、実際には不登校のきっかけとしてはかなり低い割合を示しています。調査によると、いじめが不登校のきっかけとなったケースは小学校で0.30%、中学校で0.20%にすぎません[1]。この数字は、不登校の問題が私たちの一般的な認識とは異なる複雑な要因によって引き起こされていることを示唆しています。 このような状況下で、教育関係者や保護者、そして社会全体に求められるのは、不登校の背景にある多様な要因を理解し、適切な支援を行うことです。特に、半数近くを占める「無気力、不安」を理由とする不登校に関しては、単なる怠学や甘えとして片付けるのではなく、うつ病などの精神疾患の可能性を視野に入れた対応が必要になると筆者は強調します。 本稿では、この「無気力、不安」の中に潜むうつ病に焦点を当て、不登校とうつ病の関連性、うつ病を見逃さないための注意点、そしてうつ病による不登校児童生徒への支援について詳しく見ていきたいと思います。