負けていたのか?スノボHP連続銀・平野歩夢と金ホワイトの2.50点差のなぜ
昔、ショーン・ホワイト(31、米国)は、どちらかと言うと、気の弱い、おとなしい少年だった。 平昌五輪の男子ハーフパイプで五輪3度目の金メダルを獲得したホワイトが13歳の頃、サンディエゴに近い自宅でインタビューしたことがある。 ちょうどその頃、キックボードが流行りだし、ホワイトが乗っていると、それを知らない年上の子供に取られてしまったのだという。為す術もなくそれを見ていると、一緒にいたお姉さんが、奪い返した。 「昨日、そんなことがあったの」と彼の母親が教えてくれたが、ホワイトは怒るでもなく、恥ずかしげに笑っていた。 決勝2本目。ゴーグルなどで表情は分からないが、その時のことが頭をよぎった。リードしているときは強いが、リードを許す展開では、意外と心理面で脆い──。 おそらくあのとき、あのショーン・ホワイトにもプレッシャーがかかっていた。 2人前に滑った平野歩夢(19、木下グループ)が、縦2回転、横4回転の「1440」をバック・トゥ・バック(連続)で決めて95.25点を叩き出すと、ホワイトが1本目にマークした94.25点を抜いて1位に。それを上回るために、必ずしも同じ技を決めなければならない、というわけではなかったが、ホワイトは果敢に挑戦。しかし、2本目の「1440」で着地が乱れてリズムを崩すと、その後のルーティンに繋げられなかった。 どうだろう。仮に平野が3本目でさらに得点を伸ばしていれば、そのまま逃げ切っていたのではないか。 ところが、その平野も3本目で、再び「1440」の連続技を狙ったが、2発目を決められず、それが次の着地失敗に繋がった。 ホワイトは最後、平野が2本目に出した95.25点を超えればいい。これなら1本目のランの精度を上げれば、ひょっとしたら96点ぐらいなら出たかもしれない。だが、このとき彼は守りに入るのではなく、これまで大会では決めたことがない「1440」のバック・トゥ・バックに再び挑み、決めた。それが出来るからこそ、ショーン・ホワイトなのかもしれないが、最後に「ダブルコーク1260」を決めたとき、彼は勝利を確信し、雄叫びを上げた。 インタビューのとき、お土産で渡したおせんべいの匂いを嗅いでいたあのあどけない少年が、五輪で3度目の頂点に立った。