京都「伏見稲荷」のマンションは買いか? スクール・ウォーズの伏見工高跡地の再開発で、住宅地・観光地として飛躍するのか徹底解説
約60年の歴史に幕をおろした伏見工業高校
これからの伏見稲荷エリアの不動産を語るにあたり「伏見工業高校跡地」の存在は欠かせない。伏見工業高校は、1920年に京都市立工業学校の分教場として創立された。その後、第二工業学校として独立し、1963年から伏見工業高校となった。 伏見工業高校の名が全国に知れ渡ったのは、1984年にテレビで放送された「スクール・ウォーズ」がきっかけである。スクール・ウォーズは、当時京都一荒れた学校と言われていた伏見工業高校が舞台だ。1人の熱血教師が学校のツッパリ軍団とさまざまな格闘や苦難を乗り越えた末にラグビーを通して立ち直り、全国優勝を果たすドラマである。 そんな伏見工業高校も京都市立高等学校の再編に伴い、全日制が2017年度をもって京都市立洛陽工業高等学校と統合され、京都市立京都工学院高等学校として開校した。 全日制が統合した後も存続していた伏見工業高校の定時制だったが、2021年に伏見工業高校の跡地の一部で京都奏和高校が開校されたことに伴い、2024年3月をもってその永い歴史に幕をおろしたのである。 そして現在、この伏見工業高校跡地及び隣接する配水管理課用地を活用した、大規模なまちづくり計画が動き出そうとしている。
伏見工業高校跡地で計画される大規模なまちづくり
京都市によると、まちづくり計画地は約4万平方メートルで、敷地内には戸建て住宅や7階建ての分譲マンションなどを建設し、計549世帯、約1600人が住む計画だ。 また、商業施設や交流スペース、学生・社会人寮などが入る「地域貢献施設」も建てられる計画である。このまちづくりは2026年夏に着工し、28年3月の入居開始を目指している。 敷地内の分譲マンションは、228戸の7階建てファミリーマンションと82戸の7階建てコンパクトマンションが計画されている。街全体を「次世代脱炭素街区」とするため、ファミリーマンションは中高層住宅では珍しい「Nearly ZEH-M」(※1)、コンパクトマンションは「ZEH-M Oriented」とし、合計310戸の「ZEH-M」を供給するとしている。 (※1)「Nearly ZEH-M」とは、一次エネルギー消費の75%以上100%未満の削減を図った上で、再生可能エネルギー等の導入により、エネルギー消費量をさらに削減したマンション。「ZEH-M Oriented」とは、一次エネルギー消費の20%以上削減を図ったマンションのことである。 また、125区画が計画されている戸建住宅は「次世代ZEH+」(※2)を標準とし、街区内のすべての住まいを環境配慮型とする計画だ。 (※2)「次世代ZEH+」とは、ZEHをさらに省エネ化し、再生可能エネルギーの自家消費拡大設備等を導入した住宅のことである。 分譲マンションと戸建住宅、地域貢献施設の屋上には太陽光パネルを設置する。太陽光発電設備を豊富に導入し「自家消費」を最大化する狙いだ。 街全体のネットワークとして、京都市は以下のような計画を発表している。 街区内を回遊する安全かつ快適な動線ネットワークを形成。3つのコア(核)となる広場・施設と、それらをつなぐ3つのストリートを整備し、日常的な賑わいと交流を創出します。とくにクリエイティブコアに位置する地域貢献施設や公園などのコミュニティスペースは、新たに住まう街区住民のみならず、周辺住民にとっても使いやすく、相互交流が進む場とします。 引用:京都市「伏見工業高等学校跡地及び元南部配水管理課用地の活用に関する基本協定の締結について(別紙2)」 また、街並みづくりの工夫として、川沿いの遊歩道や通りに面したマンション1階住戸には専用庭・出入扉を設けるなど、京都らしい街路を形成する予定だ。 街のシンボルとなる地域貢献施設には、商業テナントや寮が入る。1階部分には商業テナント、2~5階部分に学生・社会人寮という複合施設だ。この施設も「ZEB+ZEH」という環境配慮型建物となっており、施設の前面に設置する開発公園や前面道路に居心地の良い空間を確保することで、街のシンボル的空間を創出するとしている。 京都市は近年、地価や建築資材の高騰、国内外からの不動産投資の影響などで、住宅の確保が難しくなっている。そのため、子育て世代・結婚世代を中心とした若い世代の人口流出が京都市の課題とされており、解決に向けた施策に注目が集まっている。伏見工業高校跡地の大規模なまちづくりが、伏見稲荷エリアの不動産価値向上に加え、若い世代が集うきっかけになると期待されている。