突然、警察官に連行される高齢者!面会を認めず、相続人に不動産の評価や貯金さえ明かさない後見人…港区で起きている「高齢者連れ去り」の実態とは
高齢者所有の不動産に執着する後見人
おかしなことが起きているのがわかったのは、高輪警察署での騒動の1年前、2023年6月だった。 鈴木さんの父は6人きょうだいで、春江さんは父の一番下の妹にあたる。春江さんは、港区にある酒屋と居酒屋が一緒になった「大平屋酒店」を両親から引き継ぎ、姉と兄の3人で経営していた。居酒屋といっても、客が酒屋の冷蔵庫からお酒を自由に取ってきて簡単な乾き物を提供する昔ながらの店で、いわゆる「角打ち」と呼ばれる酒場だった。 「店を切り盛りしていた春江叔母さんたちは、3人とも未婚でした。2023年に春江叔母さんの姉と兄が相次いで亡くなって直系の相続人が誰もいなくなり、姪である私に相続権が発生しました。それで、後見人から『財産調査がしたい』との手紙が届いたのです。つまり、その時点ですでに春江叔母さんには港区長の申し立てによって弁護士の成年後見人がついていました」(鈴木さん) 鈴木さんの父は店の経営に関わっておらず、8年前に他界している。鈴木さんは、親戚が経営する店がどうなっているかもしばらく見ていなかったので、久しぶりに春江さんを訪ねることにした。すると、そこでは信じられないことが起きていた。 春江さんはその頃、身の回りの世話をしてもらう介護サービスを受けていた。施設も利用し、週に2日は在宅している。ところが、鈴木さんが訪ねてみると、その日は食事の提供を受けておらず、ずっとお腹を空かせていたのだ。驚いた鈴木さんはすぐ後見人に連絡し、食事の手配を依頼したが、後見人の弁護士は「ケアマネジャーがちゃんとやっています」と言うばかり。やむなく鈴木さんは、春江さんの在宅日には料理を持って行き一緒に食事をするようにした。 そのうちに、後見人が春江さんを高齢者施設に入所させることを決めた。突然の話だったので驚いたが、鈴木さんがケアマネジャーと一緒に港区内の施設を探すことにした。ところが、少しすると港区から連絡があり、春江さんや鈴木さんが希望したわけではない施設に春江さんを入所させるよう指示された。しかも後見人は「港区が決めたこと」として入所施設の変更を認めない。 「後見人は春江叔母さんの生活に関心を持っていない」と、鈴木さんは思わざるを得なかった。一方、後見人が強い執着を見せたのが、春江さんが所有する不動産だった。あの酒屋兼居酒屋である。店はJR品川駅から徒歩圏内にあり、周辺の公示地価は1平方メートルあたり約570万円に達する。敷地はおよそ110平方メートルで、土地だけで6億円以上の価値があるとみられている。 鈴木さんによると、後見人の弁護士は、財産調査をしたのに、相続人である鈴木さんに調査結果を伝えなかった。 「それだけでなく、亡くなった叔父が持っていた出資権を春江叔母さんに引き取らせたいと言ってきました。叔父の出資権があると、店の経営に関する重要な決定ができるようになります。それで、叔母さんに出資権を持たせることで後見人の弁護士が土地を売却したいんだろうなと思って私がそれを拒否すると、破産申し立てをすると通告してきました」(鈴木さん) 信じ難い出来事は、その後も続いた。行政によって強制的に肉親から引き離された春江さんらの財産が、後見人の判断で次々と処分されたのだ。いったい、何が起きたのか。港区が「個人情報に関係するため、お答えができません」と言い、後見人の弁護士も取材に回答しないこのケース。スローニュースでは出来事の一部始終を詳しく報じている。
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