「年収の壁」解消へ議論加速、就業調整で経済下押し-矢田首相補佐官
東京都の試算では、夫婦世帯で妻が31歳で出産後も仕事を続けた場合と、退職して年収の壁の範囲内で仕事をした場合では生涯収入に1億6000万円、退職後に再就職をしなかった場合では1億9000万円の差が生じるという。
第3号被保険者制度
第3号被保険者制度は離婚した専業主婦が無年金とならないよう1985年に創設された。ただ、専業主婦世帯は制度導入時から半減し、共働き世帯の3分の1程度となっている。同制度の加入者は22年度で約700万人。
矢田氏は同制度に関しては、「時代にそぐわなくなってきて、制度の弊害が生じている」と述べ、見直しが必要としている。一方、病気などで「働きたくても働けない人」が無年金者とならないよう配慮して議論を進めるべきだとの考えも示した。
25年の年金制度改正に向けた社会保障審議会年金部会での議論では「社会の実態に合っていない」と見直しを求める声がある一方、「高齢期の貧困の状況などをさらに分析する必要がある」と慎重論も出ている。政府は厚生年金のパート労働者らへの適用拡大を進めており、第3号被保険者の縮小につながることから、年金部会でも、これを「着実に進めることが必要」と指摘する意見も出た。
経済学者で昭和女子大学特命教授の八代尚宏氏は、第3号制度の恩恵を受ける層への配慮から自民党は制度の抜本的な改正に踏み切れていないとして、特に内閣支持率が低迷する岸田文雄政権下では打ち切ることは難しいとの見方を示した。政府が昨年から2年間限定で行っている対策も、個人が納めるべき社会保険料を支援金の形で肩代わりしており本末転倒だと批判した。
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Yuki Hagiwara