《後悔しない老人ホーム選びのポイント》確認すべきは“スタッフの定着率”、「印象に残る看取りの事例」を質問するのも有効
人生後半戦の「住まい」の問題はややこしい。仕事や子育て、実家との距離感といった制約に変化が生まれる一方、自らが「最期をどこで迎えるか」という問題に直面することになる。 【表】入居前に聞くべきことは? 老人ホーム選びのポイント5選
スタッフの定着率は重要なポイント
北関東に住む80代の男性Aさんは、数年前に傘寿のお祝いをした頃までは元気で、夫婦2人暮らしを楽しんでいたが、2年前に妻が亡くなると一気に体力の衰えを感じるようになったと語る。 「今思えば、70代の後半から、色々と生活に支障が出始めていました。妻の生前は、家のことはすべて任せっぱなしで、いざ亡くなったら買い物や掃除、洗濯などすべて自分でやらなければならない。家事が思った以上に負担で、足腰も悪くなりましてね……。子供と相談して、老人ホームに入ることを決めたんです」 特別養護老人ホーム(特養)は順番待ちで急には入れない。そこで比較的評判のいいグループホームに入居を決めた。 「最初はよかったんですけど、スタッフの出入りが激しいことに気付きましてね。私の場合、右膝が弱くて転倒しやすいのですが、新人のスタッフはそのあたりの情報共有ができておらず、重点的にケアしてくれない。案の定、廊下で転んでしまい、大腿骨頸部骨折で入院することになってしまった」(Aさん) 介護施設は複数の種類があり、それぞれ注意点が異なるという。 Aさんが入居した認知症グループホームという施設は、入居者はだいたい18人から多くて27人だった。ここで注意したいのは、小所帯の施設だから手厚いケアが受けられるとは限らない点だ。
NPO法人・となりのかいご代表の川内潤氏が説明する。 「スタッフの定着率が悪いと、それを補う人員も少ないので支障が出がちです。どんな施設でも100%事故を防ぐことはできませんが、人員配置の差配が上手くいかない施設は往々にして見守り体制が疎かになりやすい」 グループホームに限らず、スタッフの定着率は重要なポイントとなる。 「厚労省が提供する『介護サービス情報公開システム』で、各施設の従業員数と退職者の数を知ることができます。そこから離職率を計算する。あまりに多いと何かしらの問題を抱えていると思っていい」(同前) 公的施設の特別養護老人ホームに関しては、利用料金が低いこともあり、特に都市部では複数の待機者が入居の順番待ちをしている状態だ。 「ケアの質が少々悪くても利用者が途切れることはないので、受け入れ体制に問題がある施設でも、自浄作用が働きにくい点は否めない」(川内氏)