会社に壊されない生き方(9)「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由
過重労働に苦しんだあげく、自ら死を選んだ会社員のニュースを見聞きした時、「自殺するくらいなら、なぜ会社をやめなかったのか」と思った経験はないだろうか。「その判断力が奪われてしまうのがブラック(企業)の恐ろしいところ」と指摘するのは、『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(あさ出版)の著者であるイラストレーターの汐街コナさん。会社に壊される前に抜け出すには、「10年後の自分を想像してほしい」と話す。
「今、やろうとしていたのは自殺だよね。あ、これはやばいな」
かつて、汐街さんは過重労働が原因で自殺しかけた経験がある。広告制作会社でグラフィックデザイナーとして勤めていた時の話だ。多忙な業務の中、残業は月90~100時間におよび、毎晩走って終電に飛び乗る日々が続いていた。疲れがたまり、吐き気や、めまいを感じる時もあった。 ある夜、会社帰りの地下鉄のホーム。電車がまもなく到着するという時、ホームで電車を待っていた汐街さんの頭に、“今一歩踏み出せば、明日は会社に行かなくていい”という考えが浮かぶ。それは、素晴らしいアイデアに思えた。もともとは怖がりで、普段ホーム上では線路から遠いところを歩いていたのが、その時は線路に近づき、ホームの端から片足を踏み出しかけていた。「そこで理性が働いたのか、後ろに戻っていました」。 危険な時間が過ぎた後、汐街さんは「今、やろうとしていたのは自殺だよね。あ、これはやばいな」と思ったという。日々死にたいと考えていたわけではなかった自分が、あやうく自殺しかけた。死にたいと思っていなくても死ぬことはあるのだ、と思い知った。「今の働き方では死ぬかもしれない」と考えて、会社を辞めて転職。その後、結婚を経て、今はフリーのイラストレーターとして活動している。 書籍『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』は、過重労働から逃れるための方法や考え方などを漫画と文章でわかりやすく訴えている。ページを開くと、冒頭には自殺未遂のエピソードに続き、汐街さんが考える過重自殺に至るプロセスが描かれている。