欧米いいとこ取りで日本の文明は発展した 旧司法省建築と日本人の柔軟性
こうして日本建築界には、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、それぞれの、様式(歴史主義)建築からモダニズムへの流れが取り入れられているのである。建築だけではない。明治以後の日本文化には、欧米各国の、それぞれ得意分野の流れがそれぞれの支流を形成している。ヨーロッパにおいても、フランスは美術に優れ、ドイツは音楽に優れ、ロシアは文学に優れと言われるが、日本はこれを「いいとこ取り」しているのだ。 こんな国は他にない。当のヨーロッパではそれぞれのナショナリズムがあるから、他国のいいところをそのままには受け入れることはできない。アジアやアフリカやラテンアメリカの植民地となった国々では、宗主国の文化が圧倒的な影響力をもつ。 その意味で日本という国は、欧米以外の地域で唯一早々と先進化し、しかも欧米各国の文化文明のいいとこ取りをして、しかもそれを日本文化に接ぎ木するようにして育ててきた、実にユニークな国なのである。昨今、先進国からも、途上国からも、日本文化に対する評価が高いのは、伝統文化ばかりでなく、こういった近代欧米文化の「いいとこ取り」にも由来するのではないか。 この軽やかな柔軟性こそ大切にすべきものだ。 今後強化されそうな日米同盟であるが、常に臨機応変、軽快で柔軟な国家姿勢を捨てるべきではない。