「まさか、経営理念がない企業がこんなに多いとは」 将来予測が立たない時代、数字の見通しより「パーパス」が重要に
ここ数年、「パーパス」という言葉を目にする機会が急増した。パーパスとは何なのか。なぜ今、注目を集めているのか。企業の事業承継において、パーパス経営の重要性を説く経営コンサルタント「やまぐち総研」(山口市)の中村伸一所長に聞いた。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆そもそもパーパスとは
―パーパス、パーパス経営という言葉はどういう意味でしょうか。 「理念」や「理念を軸とした経営」と捉えていいと思います。 組織が存在する意義や目的を明確にして、ビジネス戦略や意志決定の基盤として活用するためのものが「パーパス」です。 ――「ビジョン」とはどのような違いがあるのですか? 人によってそれぞれ定義が異なります(笑)。 パーパスは存在意義で、ビジョンはマイルストーンを設定し…などと説明していましたが、それではあまりにも堅苦しい。 私自身は、細かい定義にはこだわらなくなりました。
◆「あって当たり前」…じゃなかった
――中村さんは全国でも珍しいM&A・事業承継に伴うパーパス経営のコンサルタントですが、なぜパーパスに注目するのですか? 私は大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)のグループ会社に就職しました。 パナソニックグループには、経営活動の指針である「綱領」や従業員の心構えを示した「信条・七精神」があり、会社の理念が全社員に浸透していました。 当時の私にとって、理念はあって当たり前の存在だったのです。 ところが、1998年に友人らとITベンチャーを起業し、ホームページ制作を請け負い始めたところ、経営理念がない中小企業が多いことに驚きました。 仕方がないので、私たちが大手企業を参考にして顧客企業の理念をつくり、ホームページに記載することがありました。 そのころから「理念って、こんなんでいいの?」と疑問を感じていました。 その後、経営理念をコンサルティングしたいという思いが高まり、2005年に「やまぐち総合研究所」を設立しました。 当時は起業ブームだったことから、創業支援に携わっていました。 「創業者は別に理念なんかいらないんじゃないか?」と言う人もいますが、創業には事業への思いが必要です。 その思いが理念になるのです。