斎藤元彦はなぜ再選されたのか 「情報の空白」期、立花孝志参戦後に起こっていたこと【2024年を振り返る】
歴史的に見れば、新しいテクノロジーの誕生とともに、情報の流通を握る「情報の権威」は交代してきました。中世までの口コミ中心の時代から、活版印刷術によって紙に印刷された文字情報の大量流通が可能になり、印刷インフラを持った出版社・新聞社が情報の権威となりました。 ラジオ、テレビと人々の情報消費の中心は移り変わり、いまはインターネット、とくに人々が双方向につながり合い、誰でも投稿できるソーシャルメディアがその中心となっています。 博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2024」を見ると、2014年は1日あたりのメディア総接触時間は385.6分でテレビ156.9分、新聞23.4分、携帯/スマホ74.0分ですが、2024年はメディア総接触時間432.7分、テレビ122.5分、新聞9.2分にまで減る一方、携帯/スマホ161.7分と倍以上に増えています。 いつでもどこでもすぐに見られる。自分の撮影した写真や動画をすぐにアップできて、位置情報とも同期できる。生成AIで複雑なビジュアルも簡単に製作できるようになり、便利になる一方のソーシャルメディアは今後も拡大を続けるでしょう。 ■調和のある情報空間を築くために 便利なソーシャルメディアですが、偽情報・誤情報が大量に拡散し、誹謗中傷が広がり、社会の分断が深まる場でもあります。私は日本ファクトチェックセンターの編集長をしていますが、たんに誤っている情報を検証(ファクトチェック)すれば、状況が改善されるというものではありません。 国連やG20では「インフォメーション・インテグリティー」の重要性が叫ばれています。日本語に直訳すると「情報の誠実性」「情報の公正性」などとされますが、しっくりきません。 国連はインテグリティーのある情報空間について、5つのポイントを挙げています。「社会的信頼性とレジリエンス(強靱性)」「健全なインセンティブ」「人々のエンパワーメント」「独立した自由で多元的なメディア」「透明性と研究」です。 これらを通じて保障される「調和のある情報空間」こそがインフォメーション・インテグリティーの本質でしょう。実現のためには4つ目のポイントである「独立した自由で多元的なメディア」の存在は不可欠であり、「情報の権威」がソーシャルメディアに移ったとしても、専業のジャーナリストや報道機関の存在意義がなくなるわけではありません。 むしろ、果たすべき役割はさらに大きくなったといえるでしょう。 (日本ファクトチェックセンター編集長・古田大輔)
古田大輔