斎藤元彦はなぜ再選されたのか 「情報の空白」期、立花孝志参戦後に起こっていたこと【2024年を振り返る】
■選挙における「情報の空白」を埋めた なぜ、人々は新たなナラティブを受け入れたのか。考えるべきは「情報の空白」の存在です。 選挙戦が始まると、新聞やテレビからは個別の候補に関する情報が減ります。公平性を重んじ、特定の候補が有利・不利になるような情報発信を控えるためです。 確かにテレビには放送法4条の「政治的公平性」、新聞も公職選挙法148条の「選挙の公正を害してはならない」という規定はあります。しかし、これらは報道自体を抑制せよというものではなく、事実の歪曲や虚偽報道を抑えるためのものです。 ところが現実には、選挙戦が始まり、有権者がまさに候補者に関する情報を必要とするタイミングで、具体的な報道が減ってしまう。その「情報の空白」を埋めたのがソーシャルメディアでした。 YouTubeだけを見ても、選挙戦が始まるまでは、民放各局のアカウントの動画がよく見られています。しかし、選挙の告示から投開票日という最も重要なタイミングで、民放アカウントの発信は弱まり、立花氏のようなインフルエンサーや独立系メディアの動画が見られるようになります。 選挙期間中にGoogleやYouTubeやTikTokなどで関連する情報を検索してみれば、その傾向は明白です。NHKの出口調査によると、今回の投票の参考にした情報として「SNSや動画サイト」が30%で、「新聞」や「テレビ」の各24%を超えました。 投票率は55.65%で、斎藤氏が初当選した2021年の前回選挙を14.55ポイント上回りました。注目を集めて盛り上がる中で、ソーシャルメディアで選挙関連の情報を検索した人は多いでしょう。そのときにどのような情報をより多く目にしたか。「SNSや動画サイトを参考にする」というのは、有権者にとって情報の空白を埋める合理的な判断だったといえるのではないでしょうか。 ■情報の権威の交代 ソーシャルメディアの影響力拡大は不可逆的な変化です。日本に関していえば、むしろ遅すぎたともいえるでしょう。 アメリカではまだ新参の候補者だったバラク・オバマ氏が勝った2008年の大統領選はフェイスブックの活用に注目が集まり、すぐにソーシャルメディアが選挙戦で重要な位置を占めるようになりました。大統領選で2016年のドナルド・トランプ氏が勝利した際には、「フェイクニュース」が伝統的な大手メディアの発信以上に広がる状況に世界が驚愕しました。 トランプ氏が再選された2024年の大統領選では、フェイスブック、X、YouTube、Instagram、Podcastなどあらゆるソーシャルメディアで選挙情報が飛び交っており、日本もそうなることは間違いありません。