【相撲編集部が選ぶ九州場所3日目の一番】琴櫻、先場所に続き王鵬に苦杯。大関トリオの一角が崩れる
豊昇龍と大の里に前を行かれる形になっただけに、意外にこの1差が重い
王鵬(押し出し)琴櫻 初日、2日目と、全員がきれいに白星を並べていた大関トリオの一角が、3日目に崩れた。 最初に土がついたのは、番付の序列では一番上に位置する琴櫻。先場所に続き、“角界サラブレッド対決”で王鵬に敗れた。 立ち合い、相手の突きを封じ、右を差して出た。土俵際でうまく回り込まれたが、向き直って再び組み合ったところでは浅いモロ差し。ここまでは悪い流れではなかった。 しかし、王鵬に差し手を極めるようにして強引に出られ、これを嫌がって体を離して左に回ったところからは、守勢に回ってしまった。さらに左に回って上手を探るが取れず。逆に王鵬に左から突き落とされ、さらに右ノド輪から左の小手投げと動かれて上体が浮き、右差しを許すと一気に出られて土俵を割ってしまった。 【相撲編集部が選ぶ九州場所3日目の一番】琴ノ若が、幕内では13年ぶりの「大逆手」で逆転勝利し3連勝 「しっかり我慢できたんで、よかったんじゃないかと思います。きょうの相撲に限っては、圧力がついてきているんじゃないかと思います」とは、勝った王鵬。先場所は「止まっちゃいけないという気持ち」で琴櫻から初勝利を挙げたが、おそらく今場所も同様の意識はあったのだろう。先手を取られても、多少強引にでも、とにかく動いてチャンスをうかがったことが、2場所続けての勝利につながった。 琴櫻とすれば、先場所の王鵬戦同様、決定的な敗因が見えづらい負け方と言えるとは思うが、強いて言えば、取組半ばから、とにかく攻めようとした王鵬と、かわしてさばきに行った琴櫻の前への、圧力の差が結果に表れた、ということだろうか。 琴櫻としては、いったん止まることがあったとしても、その後もさばきに入らない、という姿勢を出していけるかどうかが、あすからの立て直しへのカギになってくると思うが、あすは好調の若隆景との対戦だけに、さてどうなるか。 いつもの場所なら、まあ序盤での1敗なら自力での逆転のある範囲なので、そう痛手ではないということになるのだろうが、今場所は、この後そうそうポロポロと星を落としてくれそうにはない豊昇龍と大の里に前を行かれる形になっただけに、意外にこの1差が重い、ということになる可能性もある。 3日目を終わり、幕内の全勝は豊昇龍、大の里、若隆景、熱海富士、隆の勝、一山本、阿武剋の7人になった。 きのうは筆の勢いで「関脇以下で優勝争いに食い込んでくるとすれば若隆景ぐらいか」と書いてしまったが、ここまでの相撲を見ると、若隆景のほかにも、熱海富士が幕内に入ってからは一番の内容(たぶん優勝決定戦に出た場所よりもいい)で、覚醒のきざし。さらには隆の勝も優勝決定戦に出た7月場所以上の右からの攻めの威力を見せており、要注目。またこの日、獅司との若手同士の長い力相撲を制した阿武剋も、先場所は左足首の具合がよくなかったのか実力を出せなかったが、体の具合さえよければ平幕二ケタの地位では爆発があって不思議ではない。1敗の尊富士も加えて、目の離せない力士は少なくない。 番付からいくと、この後しばらくは、今、名前が挙がった中から、若隆景と熱海富士が連続で上位戦が組まれていくことが予想される。優勝争いがどういう形勢で後半戦に入っていくかは、その結果次第、ということになるか。 文=藤本泰祐
相撲編集部