バイデン氏の「レガシー」日米韓連携、2国間「ディール」好むトランプ氏登板で不透明に
【リマ=淵上隆悠】米国のバイデン大統領は、インド太平洋地域を不安定化させている中国や北朝鮮に対応するため、日米韓3か国の関係を深めてきた。来年1月に就任予定のトランプ次期大統領は2国間による「ディール(取引)」を好むため、政権交代後も日米韓の枠組みを通じた連携が続くかどうかは不透明だ。
「3か国の協力が、今後何年にもわたってインド太平洋地域の平和と安定の礎になることを信じている」
15日に開かれた日米韓首脳会談で、バイデン氏は左右に座る石破首相と韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領にこう語った。
2021年に発足したバイデン政権は、覇権主義的な動きを強める中国や核ミサイル技術を向上させている北朝鮮を念頭に「格子状」の多国間連携を構築してきた。米英豪による「AUKUS(オーカス)」を発足させ、日米豪印の「Quad(クアッド)」を閣僚級から首脳級に格上げした。
日米韓の枠組み強化も「格子」の一つだ。日米韓の連携強化の機運が高まったのは、22年5月に韓国で尹政権が発足し、日韓関係が正常化に向かったからだ。
バイデン氏は23年8月、歴代米大統領が重要な外交局面で利用してきたワシントン郊外の大統領山荘キャンプデービッドに岸田首相(当時)と尹氏を招き、「日米韓パートナーシップ(協力関係)の新時代」を宣言した。首脳や外相、防衛相など様々なレベルでの会談の定例化で一致した。
協力関係の「制度化」と言える試みは、いずれかの国で政権が交代して外交方針が変わっても、影響を最小限に抑える狙いがあった。日米韓が15日の共同声明で発表した「調整事務局」の新設もその一環だ。
米国では、5日の大統領選でトランプ氏の再登板が決まった。国務長官に外交・安全保障に精通するマルコ・ルビオ上院議員が選ばれたことは日韓でも好意的に受け止められている。
ただ、多国間の連携はバイデン氏が築いた「レガシー(政治的遺産)」と言え、トランプ氏が否定したいものでもある。15日の日米韓首脳会談が自身最後の参加となったバイデン氏は「この協力関係が永遠に続くことを期待する」と語った。