F1チームにとって貴重な2週間の”シャットダウン”。ファクトリーでは何が起きている?
F1のサマーブレイクに関して、シャットダウンという言葉が使われるのを耳にしたことがあるだろう。実際にはどんなことを意味するのだろうか? 【ギャラリー】角田裕毅 × VERDY コラボポップアップ F1 F1は過酷だ。2月から12月まで全24戦が行なわれる記録的な今シーズンはなおさら厳しいスケジュールとなっており、約1ヵ月のサマーブレイクはドライバーと各チームにとって歓迎すべきリフレッシュ期間となる。 F1競技規則第24.1条には、この重要な休暇について以下のように定められている。 『競技者は7月および/または8月に連続14日間のシャットダウン期間を設けなければならない』 当然ながら、この規則を破ったチームはFIAからペナルティを受けるリスクがある。 ルールはシンプルだ。約1ヵ月のサマーブレイクのうち、2週間のシャットダウン期間中、チームはマシンの性能に関するいかなる作業も行なうことができない。 マシンのデザインやリサーチ、風洞実験、さらにはクルマのパフォーマンスに関する電話やメールの送信さえも禁止されているのだ。 しかしメルセデスの最高執行責任者(COO)であるロブ・トーマスが説明するように、やるべきことが全くないわけではない。 「メンバーの95%くらいはビーチにいることを願っているよ」 そうトーマスは語った。 「しかし多くのことが進行しており、人々はそれに気づいていない」 「この貴重な2週間を迎えるまでには、多くの計画が進められる。そしてこの2週間は、いつもはできないようなことができる唯一の時間なんだ。普段、我々は全力を尽くしているからね」 「当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、マシンの整備をするのと同じように、この時期にすべてのものを徹底的にチェックするんだ。1日電源を落としても業務に支障はないからね」 「我々のシャットダウンは土曜日の朝6時に始まり、最後のメンバーが現場を離れると、業者の”軍隊がそこを襲撃”するんだ」 「彼らはできる限りの掃除をしようとする。マシンショップではそれぞれの機械が整備される」 「実際、我々は4台の機械を撤去し、4台の新しい機械を導入する。そして、その周辺のサービスもすべて行なう」 「空調システムから照明、暖房に至るまで、すべて年に一度のサービスを受けることになる」 「修理が必要なものはすべて修理し、床のペンキも塗る。2週間後にまた人が戻った時に『あら、ずいぶん変わったわね。本当に素敵になった』って言われるんだ」 本当にチームが完全に活動を停止しているかどうか確認するのは、FIAの仕事だ。しかしトーマス曰く、チームがシャットダウン手順に従わない可能性は低いと言う。 「F1において、FIAが直接取り締まるのが難しいことはたくさんある。だからチームの誠実さにかかっていることも多い」 「もし我々が不正をして、風洞を動かしていたとしたらどうなるのか……実際それを秘密にしておくのは本当に難しいんだ。というのも、ご存知のように、人々は常にチーム間を移動しているからだ。チーム間の人材の流動性によって、多くのことが自主規制されるようになるんだ」 「それにいつでもFIAがここにやってきて、やっていることを視察する可能性もある。でも、そんなことが起こるとは思っていない」 「他のチームが活動をしているという噂も聞いたことがない。だからこれが、みんなが待ち望んでいるような休みであることを願っている」