鈴木優磨が感じさせる“チームの命運” 存在感から浮かび上がる不在時のリスクと燃料切れ【コラム】
【カメラマンの目】G大阪戦では前半に優勢も0-0ドロー
今シーズンの主役となるチームにも目星が付き、後半戦へと突入したJ1リーグ第20節。6月26日、鹿島アントラーズはホームでガンバ大阪との一戦に臨んだ。上位対決となったこの試合は、好調なチーム同士の対戦ということで互角の攻防を予想したが、前半に限って言えばその考えは大きく覆され、鹿島の攻撃が目に留まる展開となった。 【動画】「もはや笑うしかない」 鈴木優磨の鬼キープ! 鹿島はリーグ上位に進出し、チームのスタイルも定まってきたことで選手たちにも自信が漲り、その思いがプレーに表れていた。試合開始から素早く縦にボールを運ぶ迫力ある攻撃で、G大阪ゴールへと迫った。 しかし、結果的にこのG大阪戦は0-0のドロー決着となる。さらに直近の2試合を含めて、鹿島は3試合連続の引き分けで勝利を挙げられていない。だが、激しい守備で相手選手からボールを奪取し、そこから素早くゴールを目指す鹿島のスタイルは、攻撃に転じてからの仕掛けの多彩さとプレースピードが増し、ここにきて完成度が高まっている印象を受けた。 パス交換における多少のズレも、旺盛な動きでボールに追い付いてミスを帳消しにしてしまう。チームの好調を意味するミスを恐れない大胆で力強いプレーが随所で見られた。G大阪の攻撃を封じるマークは激しく、攻守が入れ替わればスピードに乗ったパス交換と鋭さを纏ったドリブルで強敵に挑んでいた。いまの鹿島ではダイナミックなリズムを作り出せない選手はピッチに立つことは難しい。そう思わせるほど、選手たちは迫力あるプレーを生み出していた。
選手個人にフォーカスすれば、知念慶は鋭いタックルでG大阪の攻撃の芽を摘み取り、もはや違和感なく与えられたボランチというポジションをこなしている。 カメラのファインダーに捉えた佐野海舟のプレーで目を引いたのは、正確に前線の味方へとつなげる中・長距離のハイボールのパスだ。グラウンダーのパスも威力を発揮していたが、長い距離のパスになると、まるで弓の名手が矢を放つように、ボールは的となる味方選手へと吸い込まれるように飛んでいく。そのキックは勢いがあり、精度も高い。 そして、攻撃の中心となっているのが、言うまでもなく鈴木優磨だ。前線で幅広い動きを見せ、チャンスメイクにフィニッシュとさまざまな場面に顔を出し攻撃をリードする。 ベルギーでのプレー経験を経て、2022年から再び鹿島でプレーする鈴木は、チームの中心選手として活躍している。チームが低調なときに向けられた批判にも矢面に立ち、ピッチ内外で鹿島を牽引してきたが、今シーズンはこれまで以上に圧倒的な存在感を放っている。 ほかのチームを見渡してみればヴィッセル神戸の大迫勇也、横浜F・マリノスのアンデルソン・ロペス、そしてG大阪の宇佐美貴史と前線で存在感を発揮している選手はいる。だが、鈴木以上に1人の存在が、チームの勝敗に大きく影響を及ぼしている選手はいない。今シーズンの鹿島にとって絶対的な選手だ。