鈴木優磨が感じさせる“チームの命運” 存在感から浮かび上がる不在時のリスクと燃料切れ【コラム】
鹿島のダイナミックさは90分間継続が困難
ただ、好調な鹿島にも不安材料や課題がないわけではない。強敵のG大阪を相手に、鹿島サポーターたちが快哉を叫んだダイナミックなプレーは、前半の45分だけに限られていた。さすがに後半は体力が消耗してペースダウンし、G大阪に主導権を握られる時間が長くなった。 鹿島は剛の鈴木とは対照的に繊細なボールタッチでチームにリズムをもたらした宇佐美を中心とした攻撃に晒される。なんとかゴール中央を固めて失点を許さなかったが、後半は劣勢の展開を強いられることとなった。 現実的に考えて肉体的に負担のかかる、相手を圧倒するアグレッシブなプレーを90分間やり続けるのは難しい。ただ、優勝を目指すうえで勝ち点3を奪取するための“攻め勝つ”プレーは絶対に必要になる。それだけに相手の牙城を攻め落とす気概から生まれる迫力あるプレーを試合のなかで、どれだけ長く続けられるかが今後の鹿島の課題だ。 そして、もっとも懸念されることは、鈴木が怪我などの理由で長期不在となった時だ。チーム戦術も浸透し、それを的確にこなす技術を持った選手が揃う鹿島だが、攻撃面において鈴木の能力に依存している部分は非常に大きい。それだけに彼が不在となるとチーム力がダウンするとは否めないだろう。 精神的にも肉体的にもタフな鈴木だが、もし彼がプレーできなくなったとき鹿島は好調を維持することができるのか。いずれにせよ、チームの命運を握っているのは、アグレッシブなサッカーの体現を目指す中心にいる、背番号40の攻撃のオールラウンダーであることは間違いない。 [著者プロフィール] 徳原隆元(とくはら・たかもと)/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。80年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。
徳原隆元 / Takamoto Tokuhara