核兵器使用の条件緩和へ動くプーチン、だが仮に核使用に踏み切っても決定的な活路なし
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 核兵器国の参加や支援があればロシアへの共同攻撃とみなす 【写真】9月22日、米国ペンシルベニア州にあるスクラントン陸軍弾薬工場を訪問したゼレンスキー大統領。同工場はロシア軍との戦闘でウクライナ軍が使用している砲弾を製造している [ロンドン発]ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月25日、主要閣僚を集め、核抑止力を議題とした国家安全保障会議を開き、米欧がウクライナにロシア国内への長距離兵器使用を認めるのを阻止するため、核抑止に関する国家政策の基本方針を更新する考えを示した。 核兵器使用の条件として(1)非核兵器国(ウクライナ)によるロシアへの侵略でも核兵器国(米英仏)の参加や支援があればロシアへの共同攻撃とみなす(2)航空宇宙兵器の大規模な発射と国境通過に関する信頼できる情報を得た場合――の2つを明確に示した。 航空宇宙兵器として戦略・戦術爆撃機、巡航ミサイル、ドローン(無人航空機)、極超音速ミサイルを挙げた。隣の同盟国ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の同意も得ているとして、ロシアとベラルーシへの侵略が起きた場合も核兵器使用の対象となるとした。 通常兵器の使用でも両国の主権に重大な脅威を与える場合も含まれる。ロシアと同盟国にとって新たな軍事的脅威とリスクを含む軍事的・政治的状況の変化を考慮し、核抑止の対象となる国や軍事同盟のカテゴリー、核抑止措置が講じられる軍事的脅威のリストを拡大する方針だ。
■ ゼレンスキー氏は見せかけの和平は断固として拒否 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、米ニューヨークでの国連総会で演説。10項目和平案を持ち出し、原子力の安全について「ミサイルやドローンによる攻撃、エネルギーシステムにおける重大な事故があれば、原子力災害を引き起こす恐れがある」と強調した。 プーチンは厳しい冬に向けてウクライナ国民の心をくじくため同国のエネルギーシステムの80%を破壊した。プーチンは原発攻撃を計画しており、他国の人工衛星の助けを借りてウクライナの原発画像や詳細な情報を入手していると指摘した。 ゼレンスキー氏は見せかけの和平とロシアの侵略継続を許す妥協は拒否する姿勢を貫いている。食料安全保障の確保、戦争捕虜や民間人の帰還、領土保全と主権の保証、ロシア占領軍の撤退と敵対行為の終結、戦争犯罪の追及、戦争終結の明確化を改めて国際社会に訴えた。 ゼレンスキー氏訪米の狙いはロシア国内の軍事目標に対し米国の地対地ミサイル、MGM-140 ATACMS(エイタクムス、最大射程300キロメートル)、英仏のストーム・シャドウ/SCALP-EG(最大射程550キロメートル)を使用することをジョー・バイデン米大統領に認めさせることだ。