核兵器使用の条件緩和へ動くプーチン、だが仮に核使用に踏み切っても決定的な活路なし
■ 米国はゼレンスキー氏の勝利計画を評価せず ゼレンスキー氏はバイデン氏説得のため10項目和平案のほか「勝利計画」を新たに持参。しかし米紙ウォールストリート・ジャーナル(9月25日付)は「米国は勝利計画を評価せず。キーウの提案は武器弾薬の提供拡大と長距離ミサイルの制限緩和に焦点を当てている」と報じた。 「バイデン政権は、ロシアとの戦争に勝利するためのゼレンスキー氏の勝利計画は包括的な戦略を欠いていると懸念している。武器弾薬の提供を増強することや長距離ミサイル使用の制限撤廃を再パッケージ化した要求にすぎない」との米政府高官の見方を伝えている。 ゼレンスキー氏は米誌ニューヨーカー(9月22日付)で共和党副大統領候補J.D.バンス氏を「彼のメッセージは、ウクライナは犠牲を払わねばならぬということのようだ。わが国の領土で取引を始めた瞬間、他地域での米国の国益を質入れすることを理解すべきだ」と批判した。 ゼレンスキー氏が米ペンシルベニア州の砲弾工場を視察したことからマイク・ジョンソン下院議長(共和党)が「明らかに党派的な選挙運動の一環」と駐米ウクライナ大使解任を要求。一部の共和党議員が「ウクライナの政治家が米国の国内政治に干渉している」と非難している。
■ ウクライナ東部戦線ではロシア軍が進軍 ウクライナ軍はロシア西部クルスク州に侵攻したものの、ウクライナ東部戦線でその代償を払わされている。ロシア軍はドネツク州のトレツク、ポクロフスク、ドネツク市南西で前進。この現状ではウクライナ軍が自国領土からロシア軍を完全に追い払うのは難しい。 英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員は英日曜紙サンデー・タイムズ(9月22日付)への寄稿で「米欧はこれまで避けてきた『勝利』とは何を意味するのかという問題に向き合わざるを得なくなっている」と指摘している。 2022年11月に発表されたゼレンスキー氏の10項目和平案はプーチンを戦争犯罪法廷に引き渡すよう求めているため、クレムリンが受け入れる可能性はゼロだ。ウクライナへの西側支援を確保し、キーウに譲歩を迫るのを阻止するのが目的だったとガレオッティ氏は振り返る。 「ゼレンスキー氏はいかなる領土の割譲も拒否している。ウクライナへの西側支援は限定的で不確実。だからこそゼレンスキー氏は勝利計画を発表した。支援国にウクライナが応じたくない譲歩を迫らないよう説得し続ける必要があるからだ」(ガレオッティ氏)