日本人の知らない日本の魅力を知っている⁉ 海外の富裕層ツーリストは何を求めて日本に来るのか?
さらに富裕層ゲストはビジネスなどを通じて人と交流する機会が極端に多かったり、さまざまな社会環境に置かれているため、「人疲れ傾向」が顕著に見られると山田さんは指摘します。そのため禅寺で瞑想をしたり、日本庭園で庭を眺めるといったウェルネス系の需要は常に高め。1358年に京都で創建された臨済宗寺院「両足院」でのプライベートメディテーションは、今やインバウンド御用達となっています。
訪日富裕層の食の動向を追えば今行くべき店も穴場も丸わかり
アメリカの大都市圏やヨーロッパの高級店に行き慣れている訪日富裕層への食のアテンドは、なかなかハードルが高いもの。山田さんは「Fancy(ミシュラン星付きなどのキラキラ系)とLocal(地元の人気店)」をうまくミックスするのがそのコツだといいます。 「初日におすすめすることが多いのが『青山鮨かねさか』。ここは系列店の中でも比較的若手の職人が寿司を握るのが特徴で、シェフとしては駆け出しの彼らが心を込めて握った寿司を食するというストーリー性が、ゲストの心を絶妙にくすぐるんですね。他店と同レベルの食材を使っているのに価格帯がやや低めで、予約がとりやすいというブッキング側の理由もあります」
必ずしもお高い店ではなくとも、街の空気感が伝わってくる店が喜ばれるという意外な傾向も。西麻布の「笄鮨(こうがいずし)」は、通りに面したドアを開けるとすぐにカウンターが配置されたレイアウトで、とにかく外との距離が近いのが意外な利点に。 「店主が通りを歩く近所の子供に気さくに声をかけていたり、街の人の息遣いが伝わるような感じ。こういう地元との“近さ”のある店は、その新鮮さもあってより心に深く刻まれるようです」(山田さん)
「和牛ステーキサンドがインバウンド客の間でブレイクしている日本橋の『西洋料理 島』は、大島シェフ父子の温かい人柄と、誰かの家に招かれたような店の雰囲気が好評ですし。それに日本人の解釈した“西洋”が、彼らにとってノスタルジックなのかもしれません」(山田さん)