かつての「高級住宅地」でも世代交代が起きる…2030年頃に中古戸建の流通量増加が見込まれる"東急線の駅名"
■街の世代交代に備えることが求められる 実際に奥沢駅~田園調布駅を歩いてみると、かつて高級住宅地として名高かった地域にも、すでに空き家になっている家がかなり目につきます。数年前の状況と比べても明らかに空き家が増えているように思います。駅からすぐの立地だったり、マンション建設が可能な場所にあるお屋敷が空き家になっています。しかも長期間放置されていることが一目瞭然の状態です。 奥沢駅や田園調布駅周辺は、都心エリアには及ばないものの、東急目黒線が都営三田線や東京メトロ南北線と相互に乗り入れて都心方面につながり、また、東急新横浜線が開業して東海道新幹線の新横浜駅にもつながるなど、交通の利便性が高い地域だと言えます。ゆとりある住環境の戸建住宅に住みたいという人にとっては、注目のエリアだと思います。 100年ほど前、関東大震災という東京都心を直撃した不慮の災害があったため、郊外住宅地への評価が急速に高まりました。長期的な視点で見ると、今後、首都直下地震などの災害リスクの高まりや発生によって、もしかしたら、再び郊外住宅地の評価される時代が到来するかもしれません。それに向けて、こうした利便性が高く、かつ大量に相続の発生が見込まれるエリアについては、自治体も重点的に空き家にしないための政策を展開し、街の世代交代に備えることが求められます。 ---------- 野澤 千絵(のざわ・ちえ) 明治大学政治経済学部教授 兵庫県生まれ。大阪大学大学院工学研究科修士課程修了後、民間企業にて開発計画業務等に従事。その後、東京大学大学院都市工学専攻に入学。2002年博士(工学)取得。東京大学先端科学技術研究センター特任助手、東洋大学理工学部建築学科教授等を経て、2020年度より現職。専門は都市政策・住宅政策。2024年現在、日本都市計画学会理事、公益財団法人 都市計画協会理事。国・自治体の都市政策・住宅政策に関わる多数の委員を務める。主な著書に『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』(講談社現代新書)、共著で『都市計画の構造転換』(鹿島出版会)、『人口減少時代の再開発 「沈む街」と「浮かぶ街」』(NHK出版新書)などがある。 ----------
明治大学政治経済学部教授 野澤 千絵