即位行事の「温かい祝福の声」に感謝 天皇陛下60歳会見(全文)
新型コロナ感染拡大「早期の収束願う」
現在、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていますが、罹患した方々とご家族にお見舞いを申し上げます。それとともに、罹患した方々の治療や、感染の拡大防止に尽力されている方々のご労苦に深く思いをいたします。感染の拡大ができるだけ早期に収まることを願っております。 近年の子供たちをめぐる虐待の問題の増加や、貧困の問題にも心が痛みます。次世代を担う子どもたちが健やかに育っていくことを願ってやみません。また海外に目を向けますと、紛争が続いている国や地域が依然としてあり、多くの人々が苦しい生活を余儀なくされ、あるいは難民として国外に逃れざるを得ない状況にも胸が痛みます。その意味でも、アフガニスタンの人々のために長年にわたり地域の発展に多大な貢献をされていた医師の中村哲さんが亡くなられたことは大変に残念なことでした。 うれしい出来事としては、昨年日本で初めて開催されたラグビー・ワールドカップにおいて、日本代表チームが次々と世界の強豪に勝って初のベスト8に進出したことや、その時使われた「ONE TEAM」という言葉の概念が多くの人々の共感を得て社会に浸透したこと、また学術の分野ではリチウムイオン電池の生みの親である吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されたことなどは、印象に残るうれしいニュースでした。 今年開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に期待することですが、まず第一にこの世界的なスポーツの祭典が、関係する方々の尽力により、つつがなく成功裏に終えられることを願っています。その上で、この大会が日本人選手を含むすべての参加者にとり、思い出に残る素晴らしいものとなることを期待いたします。そして、今回のオリンピック・パラリンピック大会を通して、特に若い人たちに世界の人々への理解を深め、平和の尊さを感じてほしいと願っています。 大会の開催期間中や、その前後に海外からの選手や観光客が大勢来日するのを契機に、日本の人々、とりわけ若い人たちが彼らとの交流を通じ、世界の多様性に対する理解を深め、国際的な視野を広げる機会になることを願うとともに、逆に海外の方にとっても日本のことを知る良い機会となれば幸いです。また、パラリンピック競技大会を通じ、障害者スポーツへの理解がさらに進み、障害を持つ方々にとっても励みになるとともに、障害を持つ方々をめぐる社会の今後のあり方の可能性についても社会全体でさらに目を向け、理解と協力の輪を広げる良い機会になることを期待しております。