デジタル広告 の未来を探る:「原点回帰し、ユーザーファーストで広告への信頼を取り戻す」Index Exchange 日本担当マネージングディレクター 香川晴代 氏
──プレゼンスの低さが目立つパブリッシャーですが、今後、期待したいことはありますか?
私が信じているのは、来年サードパーティCookieが廃止になることで、メディアが持つ消費者との接点の価値は絶対的に高まるということだ。ユーザーを識別し、どう広告を見せるかは、オープンインターネットの世界ではパブリッシャーにかかっているといってもよい。ログインの仕組みを持っているパブリッシャーの価値は高くなり、ログインがなかったとしてもユーザーの興味関心におけるプロファイリングができるのはパブリッシャーだ。一定期間、ユーザーが滞在してくれるメディアが価値を高めていくだろう。
──デマンドサイド、サプライサイドともにデジタル広告の売買においてプレイヤーが多すぎるために透明性が損なわれているのではないか、必要以上に複雑化してしまっているのではないか、という声も散見されますが、SSPとしてどのようにお考えですか。
SSP事業者がDSPを始めたり、DSPが直接パブリッシャーとつながったりするなど、セルサイドとバイサイドが混在しているのが近年の流れだ。透明性をもって説明責任を果たすにはSSPとDSPは明確に持ち場を分けねばならない。当社がSSP事業に特化するのはこのためで、広告費、あるいは広告の行き先を詳らかに説明していくことがより必要になると考える。 一方で日本市場ではなかなか、「透明性が大事である」との議論に行き着かない。ここの意識を高く持つことで、健全なエコシステムが生まれる。広告費を払うブランドサイドにも、そういった意識を高く持っていてほしい。
──こうした課題を解決する手立てはありますか? また、今度SSPはどのように取り組んでいくべきでしょうか。
たとえば、経産省が「デジタルプラットフォーム取引透明化法」を通して、プラットフォーム事業者に透明性や説明責任を問うようになったのは大きなことだと思う。少しずつではあるが、行政も動き出している。ただし、欧州などと比べて罰金などの厳しさはないため、過度な期待は厳禁だ。 我々としては今後、パブリッシャーが持っている貴重なデータをしっかりと流通できるように、技術支援をしていかねばならないと思う。いろいろな技術ソリューションは出てきており、徐々に活用もされてきている。これらの認知を、バイサイドにも知ってもらうための活動も始めているところだ。 Written by 島田涼平
島田涼平