「メディアが報じない隠された真実」は99%ウソ…「ネットで真実を知った」と言う人に決定的に欠けていること
陰謀論やフェイクニュースを見分けるには、どうすればいいのか。経済コラムニストの高井宏章さんは「適切な距離感で雑多な情報を摂取しておいた方がいい。それには新聞を読むことが効果的だ」という――。(第3回) 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)の一部を再編集したものです。 ■紙の新聞とSNSの違い ---------- 高井:元日本経済新聞編集委員。日経退職後、YouTubeチャンネル「高井宏章のおカネの教室」を開設。Twitter、noteでも幅広く情報を発信している。 新倉:東京大学法学部卒業後、現在は日本プロ麻雀協会に所属。 布施川:東京大学文学部在学中。学業の傍ら東大生ライターとしても活動中。 ---------- 【新倉】新聞を読み始めてから「いいな」と感じたことがあって。SNSだと「いま炎上しているニュース」ばかりが目に飛び込んでくるんですよね。匿名アカウントが酷いことを言って荒れているとか。そういうのばかりに時間や感情なんかのリソースを割くのは、もったいない。でも、そんな有益とは言えないことで変な快感を得て、癖になっている人もたくさんいるでしょう。 【高井】山ほど、いるだろうね。 【新倉】そういう情報に接すると、脳内麻薬が出るのかな。中毒だと感じます。新聞から情報を得る方がずっと健全で快適でした。少なくとも、ネットで毎日起きている、何の役にも立たない話で不愉快になるよりはずっといい。新聞も、意外と面白いニュースが多いですからね。「うなぎ稚魚3割減」とか。 【高井】出た、うなぎ(笑) 【布施川】ありましたね、うなぎ!(笑) 【新倉】うなぎの話は何度でも盛り上がるなー(笑) よくわからない炎上ネタなんて世界から見たら些末な問題ですし、こういう情報の方が面白いですよね。
■気になる記事があった時だけ全部読めばいい 【高井】ネットメディアはトラフィックが命なので、人間の弱いところを突いてくる。好奇心とか嫉妬とか怒りとか、感情を操作して、情報を追いかけたくなる意識を利用する。たとえ時間の無駄だとわかっていても、アプリを開いてしまえば、なかなかあらがえない。 正直に言うと、日経新聞でも、電子版の見出しには、若干、その気があります。検索で見てもらいやすいようにキーワードを盛りこむ、みたいなこともある。紙の新聞の方が、その点かなり抑制的に作ってあるので弊害が少ない。 【新倉】そうですね。こちらの感情を無駄に煽らないようにしていると感じました。 【高井】だから面白くないんだ、という意見もあるかもしれないけど、感情的なリソースをもっていかれないから、読んでも疲れないんです。最低、前文だけ読めばいいわけだから、Xのポスト1本分程度でしょ。気になる記事があった時だけ全部読めばいい。「うなぎ」とかそうだったでしょ? 【新倉】たしかに、「うなぎ」は気になって読んでしまった。 【高井】仮におふたりがいい歳したビジネスパーソンだとして、その記事を読んでれば、しばらく飲み会の話題に困らないよね(笑) 「うなぎの稚魚がねぇ……」って。 【布施川】すでにこのミーティングで「うなぎ」はメッチャこすってますよね(笑) ■実はかなりコスパがいい 【新倉】そういえば私、「気候変動でリンゴやオレンジが作れなくなる」って記事を読んでから、何かの会話で「青森でリンゴ作れなくなるかも」って話しました! 【高井】連続テレビ小説的には、カカオ豆の一連の物語も、よかったよねぇ(笑) 【布施川】そうそう! 「あ、価格落ちたんだ!」ってなりました(笑) 【新倉】布施川さんが以前、カカオ豆の不作の話で盛り上がってたの、よく覚えています(笑) 【高井】これも30日間ずっと読んでたから面白いんですよね。「カカオ、メチャクチャ上がってる~」から、「うわ~! バブルはじけたぞ~」みたいにオチが付いたから、面白い。情報を追っていれば興味深く読めるし、「こんなことが起きてるんだよ」ってウンチクを傾けられる。 【高井】さて、30日間読んでみて、コスパ的にはどうでしたか。 【布施川】1カ月で6000円。それでこれだけの情報が得られるなら安い。6000円って、マンガ10冊も買えばって金額ですよね。僕はマンガが趣味なのでそっちもアリだと思うけど、比較しても、かなりコスパのいい6000円の使い方ではないかと思いました。 1日10分で新聞を読むとして、30日で300分。5時間分の娯楽と、世間を渡っていく常識が手に入る。アリですね。