若手気鋭演出家 インタビューもとに“新時代の表現” 太田省吾の戯曲『更地』の準備上演 20日から
平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、舞台製作カンパニー「ルサンチカ」主宰の河井朗(かわい・ほがら)さんと、ドラマトゥルクの蒼乃まをさんが出演。 【関連】俳優・原田大二郎が若者にエール「とにかく熱中することを見つけて」 西田敏行さんとの思い出も回顧 表現活動をはじめたきっかけや平田さんとの出会いについて明かしたほか、12月20日(金)~23日(月)まで京都芸術センターで上演される『まさらまち』の制作過程について語った。 2人はともに、平田さんが主宰する劇団「青年団」の所属。河井さんは元演出部、蒼乃さんは俳優部だが、コロナ禍の影響を受けた世代であることから、これまで平田さんとじっくり話す機会はなかったという。 河井さんは、大阪府出身。高校時代は漫画家を目指していたが、「一生やらないことをやってみよう」と演劇部に入ったところ、どハマり。京都造形大学(現・京都芸術大学)に進学し、本格的に取り組むことに。卒業後は、同年代の演劇人が切磋琢磨しあう場所として青年団に入団を決めた。 一方の蒼乃さんは、大学に入るまで演劇を観たことがなかったのだそう。新入生歓迎行事で見かけた素敵な女性と友だちになりたいという一心で、演劇サークルへの入部を決意した。 「先輩に唐十郎さんがいらっしゃるサークル。入ってみたら、『1か月は授業に出れないよ』と(言われた)。こんなに大変だとは思わなかったのですが、裏方要員としてずるずると(笑)」(蒼乃さん) 2人は、青年団で出会った。ルサンチカは河井さん個人が運営するカンパニーで、蒼乃さんは俳優やドラマトゥルクとして参加している。「ドラマトゥルク」とは、戯曲や過去の上演リサーチなどを行う演出助手のような役割で、「芸術学芸員」とも呼ばれる。蒼乃さんは、歴史やリサーチが得意なところを買われて抜擢された。 ルサンチカでは、既成戯曲や小説、あるいは年齢職業問わずさまざまな人を対象としたインタビューをもとに再構成したテキストを使用する。今年はロンドン公演を実施し、“新時代の表現”として注目を浴びた。 2025年には、京都で故・太田省吾氏の戯曲『更地』の公演が決まっており、その準備上演として、今月20日から京都芸術センターで『まさらまち』が上演される。 戯曲『更地』は、映画『ゴジラ』のなかでゴジラが踏み荒らした東京の更地から着想を得たといわれている。河井さんは、「私たちしか知らないことは、なかったことかもしれない」という一節にひかれたという。 「僕は、戦争や争いに関する作品を選ぶ傾向があって、その観点からみても『更地』は興味深かった。これまでにも戯曲の上演は行いましたが、今回は、京都芸術センターとの共同企画として初めてのオーディションを実施。原作は男女(の配役)なのですが、性別や年齢を限定せず企画に賛同してくれる方を募集したところ、最終的に3名の男性とご一緒することを決めました」(河井さん) 『更地』の上演にあたり、蒼乃さんは、8月に京都芸術センターの一室を借りて、いろいろな方々に“家と付随する生活について”のインタビューを行い、お礼に遺影を撮る会を企画。目下、インタビューを重ねながら、出演者らの現実と作品がリンクする『まさらまち』が立ち上がりつつあるという。 太田省吾氏は、平田さんが劇作家・演出家として歩みはじめた際に最初に見出してくれた、いわば恩人。これまで番組でも、折に触れて太田氏のことを「師匠」と呼んできた平田さんは、「京都は、太田省吾さんが長く大学教員をされていた土地なので、根強い太田省吾ファンの厳しい眼にさらされると思いますが(笑)期待しています」とエールを送った。 ※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2024年12月12日放送回より
ラジオ関西