『風の谷のナウシカ』は「ジブリ」ではない←え? 噂の真相は作品制作の“裏側”にあった
宮崎駿監督の代表作なのにジブリ作品じゃないだって?
『風の谷のナウシカ』といえば、宮崎駿監督による完全オリジナルの劇場アニメとして知られる名作です。その宮崎駿監督が率いるアニメ制作会社といえば「スタジオジブリ」でしょう。それにも関わらず『ナウシカ』だけは「厳密にはジブリ作品ではない」と言われています。これはいったいどういう理由なのでしょうか? 【画像】あれ、ちょっと怖い? こちらが真剣な表情を浮かべるナウシカです(3枚) ●BD/DVDの『ジブリがいっぱいCOLLECTION』で発見! 「ナウシカ」だけが例外といわれる理由を探しに、スタジオジブリのWebサイトを調べたところ、ジブリ作品一覧のページや『ジブリがいっぱいCOLLECTION』のラインナップに『ナウシカ』が確認できました。これで『ナウシカ』がジブリ作品ではない、というのはとても信じられません。 もしかして「ナウシカはジブリ作品ではない」と言われる理由は原作の有無でしょうか。確かに『ナウシカ』はアニメ専門誌「アニメージュ」で宮崎駿監督自身が描いたマンガが原作となっています。しかし『火垂るの墓』や『ゲド戦記』など、原作付きのジブリ作品は他にもあるので決め手にはなりません。 ●ジブリが生まれる前に 本当の理由はスタジオジブリの設立時期にあります。スタジオジブリが設立されたのは1985年6月15日です。一方『ナウシカ』の劇場公開は1984年3月11日でした。つまり『ナウシカ』の方がジブリ設立より先なのです。 では『ナウシカ』はどこが制作したのでしょうか? なぜ他所の制作会社がつくったものがジブリ作品として扱われているのでしょうか。 実は『ナウシカ』を手がけたのは「トップクラフト」というアニメ制作会社でした。その後、トップクラフトは徳間書店の出資を受けて『天空の城ラピュタ』制作のため解散し、スタジオジブリへと姿を変えます。トップクラフトはジブリの前身なのです。 つまり『ナウシカ』はジブリ設立のきっかけとなった作品ではありますが、厳密にはジブリが制作した作品ではない、というのがうわさの真相でした。 しかし、宮崎駿監督が手がけた作品であること、そしてジブリの原点とも言える作品であることから、現在ではジブリ作品として知られています。同社の歴史を語る上では欠かせない、重要な作品であることに変わりはありません。「金曜ロードショーとジブリ展」などの展示会でも「王蟲」や腐海の巨大な模型が展示されていたくらいです。 ちなみに『ジブリがいっぱいCOLLECTION』には、宮崎駿監督の初めての劇場アニメ『ルパン三世カリオストロの城』も含まれています。こちらは『ナウシカ』よりも5年も前に公開(1979年)され、東京ムービーという制作会社が手掛けました。同社はスタジオジブリやトップクラフトとは無関係です。そのせいか、ジブリのホームページにある作品一覧には含まれていません。 ●宮崎駿監督という特異点 ジブリの作品一覧に含まれていない『カリオストロの城』が『ジブリがいっぱいCOLLECTION』に含まれているのは不思議ですが、なぜか納得感があります。 その理由は宮崎駿監督の存在でしょう。ジブリというブランドは単にスタジオジブリが制作に携わった作品というだけでなく、宮崎駿監督が手掛けたアニメのブランドとして多くの人に認知されています。これは非常に興味深く、管見の限りにおいて他には見られません。 ちなみに現在、宮崎駿監督は次回作を制作中とのことです。2024年5月に行われた「君たちはどう生きる展」の内覧会において、息子の吾朗監督が「宮崎駿監督が昔懐かしい冒険活劇を作っている」と発言しています。続報を期待しつつ、ゆっくり次回作を待ちましょう。
レトロ@長谷部 耕平