環境性と居住性を重視する登山者のためのゆったりテント「ニーモ/タニ オズモ2P」|これからの山道具図鑑 Vol.1
環境性と居住性を重視する登山者のためのゆったりテント「ニーモ/タニ オズモ2P」|これからの山道具図鑑 Vol.1
登山、そしてアウトドアの道具は、欧米の各メーカーを中心にして、これまで以上に地球環境に負荷を与えない製造過程、素材を使用することを前提に製品開発を行なっている。以前であれば、環境配慮を求めたぶん、機能性がやや劣っていたり、地球にやさしい雰囲気を前面に出したりするデザインも多かった。正直、そんなふうにアピールしなくても……という感じのデザインだった。 しかし近年は、環境配慮が当たり前になり、機能もデザインも独自性を備えた道具が増えてきている。環境への配慮を追求することで、これまでにはない新たな機能性、アイデアをもった道具が出てきている。それを「これからの山道具」として、レビューしていきたい。 第1回は、100%リサイクル糸で織られているニーモ/タニ・オズモ2Pを取り上げたい。軽さを装備しながらも、居住性を重視した山岳テントだ。 編集◉PEAKS編集部 文◉ポンチョ 写真◉長谷川拓司。
米国ブランドが手掛けた日本の山岳仕様テント
米国ブランドのニーモが、日本の山岳シーンにフィットするモデルとして開発した、タニ。そのファーストモデルは2012年に発売。タニは、日本語の谷に由来する。 高温多湿、雨の多い日本の山で快適にすごせる換気性能や耐雨性能を装備。前モデルからは軽量性も意識。ライペンやヘリテイジ、モンベルといった日本の山岳テントブランドとともに、「定番」の地位を確立した。 2023年発売のタニオズモ2Pからは、フライやフロアにOSMOファブリックを採用。100%リサイクルされた糸で織られ、生産時の有害な化学物質も不使用。環境へ配慮した製品づくりを重視した同社らしい取り組みを実践している。 またOSMOファブリックは環境への配慮だけでなく、新たな機能も装備させている点で、ニーモの先進性が感じられる。従来素材と同様の軽さを保ちながら、濡れた状態での伸縮性が3倍低く、たるみを抑え、撥水性もアップした素材となっているのだ。
濡れても伸びにくい素材がもたらす快適性
雨に打たれてもフライの張りが失われなければ、インナーテントとの隙間が失われることも少ない。タニ・オズモ2Pはインナーテントのドアパネルに開閉式の大きなメッシュパネル(上写真の下)、バックパネル上部にも開閉式の小さめのメッシュパネル(上写真の上)を装備していて、換気性能のよさが特長だ。これは日本の山岳環境を考慮した装備といえるもの。 しかしこの換気性能は、フライとインナーテントの間に隙間があってこそ機能する。 晴れているときにシワなくピンとテントを張れるのは、当然。だが、雨や夜露に濡れてもフライの張りが失われにくいという機能は、既存の多くの山岳テントでは装備されていないと思える。すべての山岳テントを使用した訳ではないが、雨に長時間濡れると、多くは生地が伸び、たわんでくる。 この張りを求めた機能は、恐らく業界初の試み。ニーモは、デザインだけでなく、素材開発までもしっかりと行なえる、数少ないメーカーということを証明する機能と思える。 テント泊山行を何度か経験している人ならば、雨や夜露に濡れたフライが伸びて換気性能が落ちたテント内が蒸し暑くなってきたり、インナーテントがたわんで張り付いて寝袋を濡らしたり、伸びたフライが風に吹かれてバタバタとうるさい音を立てて鳴りだした経験があると思う。 夜中に起きて雨に打たれながら、伸びたフライの張りを調節するストラップやガイラインを引き直したこともあるだろう。 私は何度もある。で、雨の日のテント泊は面倒くさいなぁと、少し敬遠しているところがある。 でも、タニ・オズモ2Pなら、そんなストレスや手間を軽減してくれそうだ。 ちなみにOSMOファブリックは、日本で展開されるニーモの小型3シーズン用テントのすべてに採用されている。そのなかでタニ・オズモ1Pと2Pは、前述のとおり日本の山岳環境に対応したモデル。 ウルトラライトのハイキングスタイルが一般化した昨今、山道具選びは軽量コンパクトさを重視しがち。しかし、軽量コンパクトを追求した道具は使う人の経験値やアイデアがあってこそ、そのよさを引き出せるもの。 その点でタニ オズモは、ULギアに求められる経験値やアイデアがなくとも、それだけで快適に機能してくれるテントだ。