<独自>心臓移植断念、5年で34人 待機長期化、緩和医療を選択 切迫患者を最優先の動き
心臓移植の待機期間が長期化する中、心臓移植を担う全国12施設で過去5年間、移植を諦め緩和医療を選択した患者が34人いたことが26日、分かった。現状では心臓の提供者に対し移植希望者が圧倒的に多く、待機期間は平均5年に上る。関係学会や厚生労働省は、病状から移植優先度が高い患者でも、より切迫した患者を優先する枠組みを創設するなどし、移植待機中の死亡者を減らしていく取り組みを進める。 日本心臓移植学会が9月、東大や大阪大の医学部付属病院など12施設にアンケートを実施し、判明した。心臓移植が必要で移植が可能だと診断されたものの、待機期間を考慮し、悪化を抑える緩和医療を施した患者が計34人いた。医師が家族らと協議して判断したとみられ、現在の生存状況は不明という。 国内では日本臓器移植ネットワーク(JOT)に心臓移植の希望を登録した患者から、条件や基準に合う候補者が選ばれる。今年9月末の待機患者は828人に上る。 現行の基準では、血液型や年齢などの条件が適合する患者のうち、補助人工心臓の装着や人工呼吸管理などの治療を受ける「ステータス1」に該当する患者が、緊急性が高いとして優先される。同じ条件の複数の候補者がいる場合、待機期間が長い患者を優先する。 ただ、医療技術の進展でステータス1の待機患者が全体の69・2%を占め、約270人は待機期間が5年以上となり、年々、延びている。 病状が悪化し死亡の可能性が高まっても移植の優先順位は変わらず、これまで602人が待機中に亡くなった。より切迫した病状の患者を最優先とする仕組みがある海外に比べ、国内の待機中の死亡率は高いとされる。 近年は脳死者からの臓器提供の増加に伴い、心臓移植件数が過去5年間(平成30年~令和4年)の年平均66件と比べ、昨年は115件と倍近くに増えたが、待機患者の数には届かない。 こうした事情を踏まえ日本心臓移植学会などが23日、余命1カ月以内と予測される60歳未満の患者を「最優先」として移植対象とされるよう、厚生労働省に基準の変更を要望した。同日の臓器移植委員会で了承され、早ければ来年にも運用が始まる見通しだ。(王美慧)