ドラマ制作における「生」と「技術」の融合――カメラマン・関毅が見つめた『海に眠るダイヤモンド』の世界
■塚原組の阿吽の呼吸が紡ぐドラマ映像の裏側 塚原監督の映像には、独特の画角がある。第7話では、炭鉱員たちが集まる建屋で、柱を中心に据えるというテレビドラマではあまり見かけない構図が使われた。「あのシーンは、塚原監督から“柱を境界線に見立てて、あちら側とこちら側の人々をわけたい”というリクエストを受けて撮った映像。こういった世界観を表現する画角は、塚原監督の指示によるものが多いですね」と振り返る。 さらに、「リクエストがない限り、撮影は基本僕に任せてくれていますが、そこから先は塚原監督の世界。そういう線引きをしているので、撮影は自由にやらせてもらっています」と語り、お互いの信頼関係が垣間見えるエピソードも飛び出す。それゆえに、撮影現場では塚原監督から「なるほど!」や「さすがです」という言葉が飛ぶこともしばしば。 「撮影中に想像以上の仕上がりになると、そのまま採用されることが多いです。そのため、決まったカット割(脚本に沿って区切りをつけ、アングルや構図などを撮影前に決めること)を守るのではなく、芝居や画角に合わせてその場で調整。監督と記録担当はできた画からその場で画並びを変更しています」と柔軟な撮影の進行を語る。 関氏が撮影した芝居を含むさまざまな映像素材は、意外なところで使われることも多いという。「塚原監督は、編集済みの映像に音楽を付けた段階でイメージが変わったと感じると、MA(マルチオーディオ:編集済みの映像にセリフやナレーション・BGM・効果音などを加え、音を最終仕上げする工程)の後に再編集することがあります。そういう作業をする人はあまりいないですね」と、珍しい工程を明かしてくれた。 ■芝居とカメラの調和が生み出すもの――少ないテイクで最大限の“生っぽさ”を引き出す 塚原組での撮影のモットーは「テイクを最小限に抑えること」だという。「回数を重ねすぎると、どんなにベテランでも慣れや疲れが出てきてしまう。なるべく新鮮な芝居を切り取ることを大切にしていて、塚原組でよく言う“生っぽさ”を目指しています」と、関氏。 その象徴とも言えるのが、第6話での鉄平(神木隆之介)と朝子(杉咲花)の告白シーンだ。「神木さんから演出の提案があったようで、監督から『恋愛ドキュメンタリー番組のような映像にしたいから、ちょっとした手ぶれ感も出してほしい』とリクエストがありました」と撮影の裏側を明かす。さらに告白後に続くじゃれ合いのシーンはアドリブだったそうで、2人の自然な演技に塚原組がフォーカスする“生っぽさ”が溢れた映像となった。