ドラマ制作における「生」と「技術」の融合――カメラマン・関毅が見つめた『海に眠るダイヤモンド』の世界
数々の作品でカメラを回してきた関氏だが、今回TBSグループとして初めて導入されたという大型LEDウォールでのフルCG背景を用いた「インカメラVFX」撮影は特に苦労したと口にする。「端島の屋上のシーンなどで使用された同技術では、カメラの上部につけたマーカーと、スタジオの天井のポイントを連動させることで、カメラの設置場所を機械が認識。 カメラとの位置や距離、角度を機械が計算し、LEDパネルのフルCGの背景がそれに応じて調整されます。撮影の準備にも時間がかかりますし、背景にリアルを馴染ませる技術の習得にも苦労しました」と、新たな挑戦を振り返った。 ■美術セットとVFX技術が生み出す、映像の新たな可能性 俳優の芝居を見せる場面と、物語の流れやスケール感を重視する場面では必要な映像も変わる。「芝居がメインのシーンでは、それを崩さないためにVFXを絡めない構成になっています。『ここまでセットの壁があったほうがいいですよね』と美術スタッフと話し合い、セットの映像だけで完結できるよう追加で対応してもらうことも。俳優の表現を最大限に引き出せる環境づくりに努めています」。 同セットの世界観の精巧さについて関氏はこう続ける。「担当デザイナー・岩井憲さんのことは、以前から細部の作り込みがすごいなと思っていました。いざ出来上がったセットを見たらスケール感が桁違いで、もはや全て本物に見えるほど。岩井さんはカメラを構えた後でも気になるところがあると、走って直しに来てくれます。細部までこだわって調整する姿を見て、こちらも背筋が伸びる思いでした」と、撮影中での逸話を披露。 そういった細部のこだわりはカメラを通して際立つもので、「床や壁などの質感の違いをはじめ、岩井さんの汚しの技や色味の抑え方が素晴らしい。俳優さんの芝居を引き立たせるために彩度を調整して、セットと演者の見え方のバランスをよくしている」と、美術チームへのリスペクトを口にした。