【ベトナム】【北部水害】アマタ、「より強く」復興 電線を地下化、教訓いかす
タイ工業団地開発大手アマタ・コーポレーションがベトナム北部クアンニン省で運営するソンコアイ工業団地(アマタシティ・ハロン)は、今月上旬に直撃を受けた台風11号(国際名:ヤギ)の経験を生かし自然災害リスクへの対応を強化する。強風で地上の送電網が損傷し配電が制約されたことを受けて、団地内の送電網の地下化を進める。運営会社の大美賀剛・副社長は16日、NNAに「(被災を契機に)より強固な工業団地にしたい」と語った。 台風11号は7日、ハロン湾からクアンニン省に上陸した。地元メディアによれば、アマタシティ・ハロンがあるクアンイエン町は時速150キロメートル級の風が吹いた。その影響で地下化していなかった団地内の一部送電線が寸断し、国営ベトナム電力グループ(EVN)からの電力供給再開後も一部テナントへの配電が制限された。台風通過の翌日から復旧作業を急いだことで、現在はごく少数のテナントを除いて電力供給は再開した。復旧作業完了は1カ月先を目標とする。 アマタシティ・ハロンは、2018年に運営会社が設立され開発に着手した新興の工業団地だ。用地を引き渡し済みのテナント企業15社のうち、稼働済みは中国の太陽光パネル製造大手、ジンコソーラー(晶科能源)のみだった。日系5社を含む残る14社は工場が完成していなかったため操業への直接的な影響はなかった。 ジンコは台風で損傷した建屋の修復作業が必要になり、操業の一部停止で電力消費が減少したこともあり、工業団地の電力不足がテナントの復旧を妨げる事態は回避した。 アマタシティ・ハロンが被害から1週間弱で送電線の地下化を進めることを決めたのは、「短期的な応急処置で従来の姿に戻すのではなく、長期的により強固なサービスを提供できるようにしたい」(大美賀氏)と考えたからだ。 ■二重の堤防で浸水回避 アマタシティ・ハロンの敷地は714ヘクタール。近くを流れる河川には当局が整備した高さ4.5メートルの堤防があり、さらに工業団地の周囲にも3.2メートルの堤防がある。二重の備えに加えて団地内の排水ポンプが機能し、浸水は免れた。 台風上陸当日は運営会社の社長以下、インフラ担当者らは泊まり込みで対応。インターネットが途切れる中で警戒に当たった。台風の通過後はテナントの被災状況の確認、人民委員会、電力や通信事業者との交渉、団地内の電力供給先との調整などに追われた。 電話は翌日以降もつながりにくい状態が続き、EVNの電力供給が部分的に再開したのは11日、インターネットの固定回線が復旧したのは13日からだった。テナントとの連絡も制限される中、運営会社として電力をいつどの程度必要とするかなどのニーズについて日々コミュニケーションを図ったという。 大美賀氏は今回の経験を踏まえ、通信インフラの途絶時の連絡手段確保や土のうなど備蓄品の準備などよりきめ細かい防災体制の強化を検討していく意向だ。「早期復旧とともに、進出を考えている企業が安心して投資できるよう改善を積み重ねたい」と強調した。 アマタはタイとベトナム、ミャンマー、ラオスの4カ国で工業団地を開発している。ベトナムでは南部ドンナイ省の2カ所でもアマタブランドの工業団地を展開し、中部クアンチ省ではクアンチ工業団地の開発に参画している。アマタシティ・ハロンには丸紅が今年に入って20%を出資した。