天気予報からわかる「景気の行方」とは?「2024年の雨期」を振り返る【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は、気象と景気の意外な関係を見ていきましょう。日照時間が短かったり、雨が降ったりすれば人々は外出を控えるため、個人消費が停滞し、経済活動に影響を及ぼします。冬季の今は、太平洋側と日本海側とで天候が大きく異なるものの、例えば全国的に雨天が続く「梅雨」は、日本の景気のゆくえを読み取るヒントになります。景気に不安を感じる人の多かった2024年ですが、景気局面を振り返ると、意外にも…?
2024年、東京の梅雨は短かった
気象庁は、令和6年(2024年)の春から夏にかけての天候経過を総合的に検討し、各地方の梅雨入りと梅雨明けの時期を確定、梅雨の時期の降水量を分析した。その結果は次のとおりである。 ----------------------------------------- 〈梅雨入り〉 ・かなり遅かった地域……沖縄地方、九州北部地方、四国地方、中国地方、近畿地方、東海地方、関東甲信地方、北陸地方、東北南部 ・遅かった地域……………奄美地方、九州南部、東北北部 〈梅雨明け〉 ・かなり早かった地域……奄美地方 ・早かった地域……………沖縄地方 ・遅かった地域……………北陸地方、東北南部、東北北部 〈梅雨の時期*の降水量〉(*6~7月、沖縄と奄美は5~6月) ・かなり多かった地域……縄地地方 ・多かった地域……………奄美地方、中国地方、近畿地方、東海地方、関東甲信地方、北陸地方、東北南部、東北北部 ----------------------------------------- 首都東京がある関東甲信地方の梅雨入り・梅雨明けの時期と景気局面の関係を、1951年から2024年の74年間にわたって調べたところ、興味深い結果が得られた。
「梅雨明けの早さ」と景気局面
梅雨の時期の景気局面は、74年間中、梅雨明けが特定できなかった1993年を除く73年間において、拡張局面になった年は49回、後退局面になった年は24回だった。拡張局面であった割合は67%で、後退局面であった割合は33%である。 梅雨明けが早い年は31回あり、拡張局面になった年は25回、後退局面になった年は6回である。拡張局面であった割合は81%、後退局面であった割合は19%で、全期間の平均と比べて景気拡張局面に当たることが多い。 梅雨の時期は雨の日が多く、野外で行う建設工事やレジャーなどの足枷になることが多いと考えられる。梅雨明けが早く、夏が早く来ると、夏物商品が売れ、レジャーへ出かける人が多くなる。これが景気にプラスに働くのであろう。