カワサキだから生み出せたゼファーはひとつの時代を作り、ゼファーXがその時代を締め括った
Z1/Z2をリスペクトしたカラーは、ゼファーχだから許される
エンジンや足回りをグレードアップされたゼファーχだが、ゼファー時代ともうひとつ大きく異なることがある。それはカラーリングだ。ゼファー時代には単色ペイントを貫いてきたが、ゼファーχになってからは火の玉やイエローボール、タイガーといったZ1/Z2のカラーリングをモチーフとしたカラーリングが採用されたのである。おそらく最初のゼファーの開発者たちは、ゼファーをZ1/Z2の縮小コピーという位置付けではなく、ゼファーという新しいバイクとして提案したかったのだろう。 しかし、多くのユーザーはゼファーをZ1/Z2レプリカの素材と捕らえ、Z1/Z2カラーにリペイントされたカスタムが多数作られた。ゼファーχにZ1/Z2に由来するカラーが初めて採用されたのは、1999年に発売された10周年モデルの火の玉風カラーリングだった。翌年の2000年には玉虫カラー風がレギュラーカラーにラインナップされ、2004年モデルではついにタンクのエンブレムが「ZEPHYR」から「Kawasaki」へと変更、それ以降は単色モデルはラインナップから消えることになった。 ゼファー/ゼファーχというバイクに、Z1/Z2というカワサキのマスターピースをイメージするなというのは難しい話だったのかもしれない。それでもゼファーというバイクの独自性を模索し、当時のデザイナーはタンクのエンブレムを「ZEPHYR」にしたのであろう。しかし、ユーザーは素直にZ1/Z2の幻をゼファー/ゼファーχに求め、モデル末期に本来の姿を取り戻したのかもしれない。そして、20年近く続いたゼファーシリーズにも、排出ガス規制によって最後の時が訪れる。 最後のゼファーχは2008年に発売されたゼファーχ Final Editionで、そのカラーリングはZ1/Z2を代表する火の玉カラーをモチーフにしたものであった。ただ、それはゼファーがZ1/Z2の縮小コピーだからではない。カワサキの空冷4気筒エンジンを継承した、Z1/Z2の正当な末裔であるからなのだ。
ゼファーχ主要諸元(1998)
・全長×全幅×全高:2085×745×1100mm ・ホイールベース:1440mm ・シート高:775mm ・車重:183kg(乾燥) ・エンジン:空冷4ストローク並列4筒DOHC4バルブ 399cc ・最高出力:53PS/11000rpm ・最大トルク:3.6kgf-m/9500rpm ・燃料タンク容量:15L ・変速機:6段リターン ・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク ・タイヤ:F=120/70ZR17、R=150/70ZR17 ・価格:58万円(税抜当時価格)
後藤秀之