カワサキだから生み出せたゼファーはひとつの時代を作り、ゼファーXがその時代を締め括った
ゼファーが巻き起こしたネイキッドブームは、カテゴリーとして定着
ゼファーが登場した1989年、ホンダとスズキからもゼファー同様に「カウルのない」新型バイクが発売されている。ホンダ CB-1とスズキ バンディットである。クラシックバイクのデザインをリブートしたゼファーに対して、CB-1は新しい時代のカウルレスバイクを模索したデザイン、バンディットはヨーロピアンスタイルをベースにした洒落たデザインを採用していた。この2車種のエンジンはどちらもレプリカモデル由来の水冷で、CB-1は57PS、バンディットは59PSという最高出力を誇った。これらの元々はスタンダードなデザインであったカウルレスのバイクは、多様化したバイクカテゴリーの中での呼び名が求められ、「ネイキッド」というカテゴリーを生み出した。 この「ネイキッド」カテゴリーを生み出した3台のバイクだが、結果として勝利したのはゼファーであった。ゼファーは発売翌年には1万台以上を売り上げ、1992年までの3年間ベストセラーを記録した。結果としてホンダからはCB400SF、スズキからはGSX400インパルス、ヤマハからはXJR400が発売され、トドメとしてカワサキからもZRX400が発売された。さらにネイキッドブームは大排気量モデルにも波及し、カワサキからはゼファー1100/750とZXR1100、ホンダからはCB1000SF、ヤマハからはXJR1200が発売されてネイキッドラインナップは充実していった。
4バルブ化されたエンジンで、ゼファーは完成した
ネイキッドバイクというカテゴリーを作り出したとも言えるゼファーは、ライバルたちと共にネイキッドをレーサーレプリカの次のブームにまで押し上げた。しかし、高性能なライバルたちの登場は、当然ゼファーの売上に影響を及ぼす結果となる。それでもゼファーは1995年まで大きな変更が加えられず、カラーチェンジ程度のマイナーチェンジだけが繰り返された。 ゼファーに大きな変更が加えられたのは1996年のことで、4バルブ化されて53PSのパワーを得たエンジンを搭載した新型は、「ゼファーχ」という新しい名前が与えられた。登場した1996年モデルはエンジン以外はゼファーと大きく変わらなかったが、翌1997年には前後ホイールが3スポークタイプの17インチに変更され、フロントのブレーキキャリパーが4ポット化。ラジアルタイヤを採用し、さらにフロントフォークも41mm径へとグレードアップされた。2003年には排出ガス規制に対応するために改良が加えられ、フロントブレーキキャリパーも変更されている。ゼファーの弱点を全て補ったゼファーχは、ゼファーの完成形であったと言って良いだろう。