カワサキだから生み出せたゼファーはひとつの時代を作り、ゼファーXがその時代を締め括った
現在ではバイクのカテゴリーとして定着しているネイキッドは、カワサキが時代に反抗するようにデビューさせたゼファーが生み出したと言って過言ではないだろう。そして、そのゼファーを4バルブ化したゼファーχは、ブーム末期に登場したネイキッドバイクの完成形と言えるだろう。 【画像】ゼファーXのディテールや関連モデルをギャラリーで見る(22枚) 文/Webikeプラス 後藤秀之
GPzに積まれ、現役を続けていたFXの空冷エンジン
ゼファー400が登場した1989年、バイクメーカーのラインナップの中心はレーサーレプリカであった。400ccは規制値一杯の59PSの水冷エンジンが当たり前であり、空冷エンジンは過去のものになりつつあった。各メーカーの主力であった400ccの4気筒エンジンは水冷化されていったが、カワサキに関しては水冷のGPZ400RやZXR400と並んで、空冷のGPz400F/F- IIという空冷エンジン搭載モデルの販売を続けていた。 GPz400F/F- IIはZ400FX由来のDOHC空冷2バルブエンジンを搭載し、Z400FX搭載時に43PSで始まった最高出力はGPz400F/F- IIでは53PSまでパワーアップされていた。スタイル的にはFがGPz1100系のハーフカウル、F-IIは当時流行していた角形ヘッドライトを採用したカウルレス仕様であった。
カスタムZブームが、ゼファー誕生へとつながる
1980年代中頃から、レーサーレプリカブームと並行して、カスタムバイクのブームが始まっていた。そのカスタムの素材となったのはZ1/Z2を中心とした一昔前の空冷大排気量車で、最新のレプリカの足回りを組み合わせて走行性能を高めるという手法が流行した。このカスタムバイクブームの起因の一つとして、漫画「あいつとララバイ」の主人公である研二のZ2という存在は見逃せない。作中でライバルとバトルする中で次第に改造されていく研二のZ2は、エンジンがチューニングされ、足回りも極太のタイヤを履く仕様へと変更されていく。これはカスタムバイクブームを確実に加速させた要因であり、その中でさらにZ1/Z2のカスタムブームを巻き起こした。 カワサキはこのZ1/Z2のカスタムブームを知ってか知らずか、この時期にZ1の復活計画を検討していた。しかし、この計画はコストの問題から、「空冷400ccプライスバイク計画」という計画に変更された。その結果生み出されたのが、Z1/Z2をイメージさせるタンクやテールカウルデザインに、キャリーオーバーされていたGPz400F/F- IIの空冷エンジン、フロント17インチ、リア18インチのキャストホイールを組み合わせたゼファーだった。カウルを持たない古典的スタイル+現代的な足周りというスタイルのゼファーは、当時のカウル付きバイクを見慣れた目には新鮮に映った。しかし、スペック至上主義の中で育ってきた当時のライダーたちは、46PSとベースになったGPz400F/F- IIよりも低い最高出力を見て少しがっかりしたに違いない。