止まらぬ円安の「1200兆円の借金よりヤバい」現実 小手先の日銀介入では隠せない「本当のリスク」
たとえば、5000円のお寿司は、1ドルが100円の時代なら50ドル相当だが、1ドル150円時代には、33ドルで食べられる。 昨年の為替相場は、1ドルが140円から150円で推移し、最近の中では円安水準だったにもかかわらず、昨年の日本の貿易・サービス収支は約10兆円の赤字だった。つまり、日本の物が売れなかった。 これは、日本製品が競争力を失っていることを表している。 2.投資による為替取引 ここまで消費だけの綱引きの話をしてきた。ここに加勢をしているのが、投資をする人たちだ。
新NISAを始めている人はご存じのように、日本よりもアメリカなど外国の金融商品のほうが、期待利回りが高く、外国に投資する人が増えている。 消費でも投資でもドルを買いたい人が多いから、円安に動いているという当たり前の話なのだ。政府の借金が多いことは直接的には関係していない。 ■小手先だけの金融政策 外国に流れる投資マネーが増えると何が起きるだろうか。 その投資マネーを有効に活かすことができれば、外国の会社は新しい技術の研究や新製品の開発を行うことができる。日本製品はますます競争力を失うことになるだろう。
昨年、貿易・サービス収支は10兆円の赤字だったが、所得収支(海外からの利子や配当)が30兆円の黒字だったため、トータルの経常収支は20兆円の黒字だった。 これだけの経常黒字があるにもかかわらず、円安が進んでいる現状は、日本国内での投資先の不足や、国際市場で競争力のある製品が少ないことを示している。今後は少子化による人材不足も懸念されている。経常黒字にあぐらをかいていると、貿易・サービス収支の赤字が膨らみ、経常収支も赤字に落ち込むこともありえる。
岸田政権の「資産所得倍増プラン」は積極的な投資を後押ししているが、昨年の日本株市場は、その活況とは裏腹に、上場企業の新規株式発行による資金調達は2兆円にも満たなかった。これに対し、上場企業による株の買い戻し(自社株取得枠)が10兆円近かったことを考えると、資金需要の低さがうかがえる。 ■「外国のために何ができるか」を考える 日経平均の上昇を礼賛している場合ではない。投資マネーが有効に活用されていない現実が存在している。