遺品整理の現場に犬猫の遺体が放置される現実「ペットも大事に送り出したい」と火葬サービスを始めた女性の挑戦
── アルバイトからの大抜擢だったのですね。社歴も浅く年齢も若い森山さんが取締役になることに周囲の反発はなかったですか? 森山さん:やはりおもしろく思わない人も多かったようで、支店の人たちから「なんで森山が?」とか「あいつに任せて大丈夫?とみんな心配しているよ」と言われ、落ち込んだこともありました。でも、へこんでいても何も解決しないので、「教えていただいてありがとうございます!」と感謝を伝えて聞く姿勢を徹底し、信頼関係の構築に努めました。一方で、真正面から受け止めすぎず、まあ、そういう意見もあるよね。でも、私を評価するのは社長であって、不満を言ってくる人たちではないからと受け流し、自分の信じることをブレずにやり続ければいいと思っていましたね。
── 周りの意見に耳を傾けるけれど、翻弄はされない。ブレずに意思を貫くことを大切にされてきたのですね。 森山さん:これから会社が大きくなっていくのに、いろんな声にいちいち翻弄されていたら経営は務まらないと自分に発破をかけ、気持ちを切り替えるようにしていました。
■遺品整理でペットの遺体に遭遇「ペットもていねいに送り出したい」 ── 2020年にペット火葬サービスをスタートされました。この発想はどこから生まれたのでしょう?
森山さん:きっかけとなった出来事が2つありました。ひとつは、遺品整理の際、置き去りにされたペットの存在です。ゴミ屋敷化した現場から猫ちゃんがひょこっと出てきたり、亡くなっている姿を発見したり…そんな話を聞くたびに胸が痛み、ペットの「幸せな最期」を考えさせられました。 もうひとつは、私自身のペットに対する思いです。母が保護猫を預かるボランティア活動をしていたので、常に家の中に猫が何匹もいる環境で育ちました。ただ、なかには満足に見送ってあげられなかった子もいて、後悔の気持ちがずっと残っています。行政に依頼するとモノ扱いで処理されてしまうことにも違和感があって。小学生のときには飼い猫を事故で亡くし、ペットロスで何日も学校を休むほど落ち込んだこともありました。そうした経験から“家族同然に過ごしてきたペットを人間に近いような火葬をして見送ることができたら”と考え、サービスを始めたんです。