再生回数3億回超、マカロニえんぴつのはっとりが語る「『なんでもないよ、』はラブソングのタブーに触れた」
「父親も学生時代からずっと音楽をやっていて。理系の大学に進んで就職したんですが、音楽はずっと続けていたし、捨てきれない夢があったみたいなんですよ。音楽を強要されたことはまったくなくて、野球をやってたときも、漫画を描いていたときも『いいぞ、がんばれ』と応援してくれて。ただ、曲を作り始めたときは『お前も音楽に目覚めたか』って喜んでくれてたみたいです」 はっとりが大学の知り合いに声をかけ、マカロニえんぴつを結成したのは2012年。当時イメージしていた音楽性は、「ロックでポップ。キャッチーなサビ、メッセージがしっかり残る歌詞」だったとか。 「高校時代に宅録で作っていた曲があったので、まずはその曲をバンドでやろうと。音大の連中なので、それなりに形にしてくれるだろうという他力本願なところもありました。メンバーを選んだ基準ですか? ツンケンしてなくて、人がよさそうなところかな(笑)。みんな音楽に対して真面目だし、いいメンバーに声をかけたなと思ってます」
流行に反応しすぎるのはよくない
初ステージは、学内のイベント。そのライブで手ごたえを感じ、横浜、東京のライブハウスを中心にライブ活動をスタートさせた。在学中の2015年に初の全国流通盤『アルデンテ』を発表するなど、着実に前進を続けた。しかし、はっとり自身は「最初の3年間はすごくきつかった」と振り返る。その理由は、どうしてもはっとりのワンマンバンドになりがちで、理想とするバンド像とかけ離れていたことだ。 「ライブでも孤独を感じていたし。でも、僕自身も矛盾してたんですよね。メンバーに『イメージを超えてこい』と無理難題を言うわりには、『こうじゃなくちゃダメ』と縛っていたところもあったので」
また、音楽シーンの潮流とバンドが目指す音楽性のギャップにも悩まされたという。マカロニえんぴつが活動を始めた2010年代前半のバンドシーンは、「4つ打ち」ブーム。ノリやすいリズムを押し出し、観客を盛り上げるバンドが人気を得ていた。歌を重視するマカロニえんぴつのスタイルはなかなか受け入れられず、イベントなどでも苦戦することに。 「4つ打ちの曲が苦手だったし、うまくやれなかったんですよ。サーキットイベント(複数のライブハウスで開催されるイベント)で自分たちの前のバンドが盛り上がってると、『俺たちにはこういう曲がないな』って憂鬱でした。お客さんにも『いまいちノレないな』と思われてただろうし、居心地はよくなかったです」