ソフトバンクの孫オーナーが金満野球の批判に反論!
V3を狙う今季も戦力はダントツの優勝候補で、「金満チーム」の嫉妬めいた陰口が、早くもどこそこからも漏れるが、孫オーナーは、力を込めて、こう説明を続けた。 「ソフトバンクには3軍があります。3軍までを作って育成、ドラフトに漏れたような選手も含めて、若手から自ら育成しています。スカウト(外からFA、外国人を獲得している意味)だけではない。多くの若手を自前で育てているんです」 ソフトバンクは、5年前から3軍制を導入。この3月に、2、3軍専用の立派な新本拠地、HAWKSベースボールパーク筑後が、筑後市津島に落成した。孫オーナーが自ら注文をつけた両翼100メートルのメイン球場だけでなく、サブ球場、クラブハウス、室内練習場、トレーニング施設を完備している。巨人もソフトバンクを習い、今季から3軍制を導入しているが、ほとんどの球団のファームの指導者が、限られた試合の中で1軍半選手の調整と若手育成を同時に行わねばならない矛盾に苦悩している。 だが、ソフトバンクは、育成に重点を置ける3軍というシステムを作った。実際、トリプルスリー、柳田悠岐もルーキーイヤーは、3軍で経験を積んで育った選手。補強と同時に、自前の若手育成に、どの球団より目を向けて投資している。補強部分だけを捉えられ球団の姿勢を「金満」と批判されることに我慢ならないのも当然か。 「グッズ、飲食、商店街やファンクラブの盛り上げもあって、球団運営がうまくいき、球団が黒字で(本社からの)補填なしでやれています。企業とスポーツのあり方は、単なる広告塔という存在だけじゃなく、プロ球団、そのものの運営のありかたをレベルアップすることで、ちゃんとポジティブスパイラルを作ることができます。 赤字で縮小するのではなく(戦力を)強化することで、逆に黒字になるんです。そういうポジティブな可能性があることをホークスの経営で感じました。プロスポーツの運営は、アメリカやはヨーロッパでも、よりプロ化されています。そのことでどんどん企業価値が増えています。日本は、これからもそうなっていくでしょう」 孫オーナーは、スポーツビジネスの理念をそう語る。間違いなく、ソフトバンクは、ビジネス面では遅れていた日本のプロスポーツ界に、ひとつの成功モデルを確立させた。横浜DeNAなど、積極的にマーケティングを取り入れてファンを増大させ、スポーツをビジネス化して、経営を健全化させている球団も出てきた。 ファンをどう喜ばせるか。そして、明確な将来ビジョン。貧乏球団がデータを駆使してチームを強化したアスレチックスのマネーゲームの例もあるが、それもこれもつまるところ、スポーツビジネスの本質は、そこにある。孫オーナーの金満野球への反論は、チームによって経営ビジョンに温度差がある(コンプライアンス違反を見過ごすチームなど)今の野球界への強烈なメッセージだったのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)