「時代の変化」に精神的に追い詰められる「中高年の会社員」の実態
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】「うつによる仮性認知症」と「本来の認知症」の見分け方 長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。 そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。 実にもったいないことだと思います。 では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。 医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。 *本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。
中高年にも危機はある
ここまで高齢者の心の危機を見てきましたが、中高年も精神の健康を保つのは簡単ではありません。むしろ高齢者よりも厳しい状況にあるといえるのではないでしょうか。 精神保健学における中高年とは、四十五歳から六十五歳くらいまでを指します。 六十五歳以上を「老年期」と称するのに対し、この時期は「壮年期」または「成人期後期」といいます。経験と知識を積み、人間として成熟する時期ともいえますが、身体の衰えが徐々にはじまり、無理がきかなくなり、老眼や更年期障害(女性だけでなく男性にもあります)などで、近づく老いを意識させられる時期でもあります。 また、社会的にも立場が多様になり、職場や地位に不満がある場合はもちろん、出世して希望の地位に就いたとしても、さまざまな問題に直面するのがこの時期です。 プライベートでは、家庭があってもなくても、それぞれに精神の健康を脅かす要素は多く、安定と不安定が入り混じり、うまく対応しないと、それまで築き上げた幸福を一挙に失うおそれもあります。 さらに、中高年は人生の折り返し点で、変えることのできない過去と、選択肢の狭まった未来の間で、心理的に揺れ動く時期でもあります。 この時期を上手にすごすことが、老年期の安定、すなわち「幸せな老後」につながるのですが、口で言うほど簡単ではありません。 中高年の心の危機について、順に見ていきましょう。
