子どもの「できない」原因が発達障害だと分かったら 親子の傷を癒やすための言葉
本人も自分の言葉で親に伝える
親だけでなく、子ども自身が自分の思いを言葉で明らかにして親に伝えることも大事です。 ADHDの場合、認知特性から記憶を鮮明に記憶していることがあります。親に対してネガティブな感情をもつできごとがあるなら、それを自分の言葉で話してもらいます。親はそれを否定せず、まず本人の思いをただ聞いてまるごと受けとめてください。子どもがすべての思いを吐き出したら、親はそれについて誠実に謝罪し、自分の思いを伝えます。 子どもは自分の思いを伝えられると、満足感や達成感が生まれます。それがあって初めて親の思いを冷静に聞く気持ちになれます。 発達障害の家族関係の治療を行っていると、当事者から「親も苦しかったんだ。私と同じ思いを子ども時代にしていたんだ。だから私を見ると過去の自分を見るようでつらかったんだとわかり、親を許す気持ちになった」という声を聞くことがあります。親子間でこうしたやりとりをするのは、困難なことかもしれません。主治医や第三者があいだに入って行うとよいかもしれません。 ただし、なかには視覚優位という特性をもつ子もいます。視覚優位の子は記憶が映像として鮮明に残ることがあります。そうなると、過去の記憶がまるでいま起きているように感じるタイムスリップ現象が起き、生々しい感情が呼び起こされて苦しみます。 PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの症状を引き起こすこともあります。そのときは主治医と相談し、発達障害とは別に専門の治療を受けるケースもあります。
宮尾益知(監修)